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第28話 和彫り野郎

 和彫り野郎、名前は石田三成。歴史好きな父親が洒落で付けた名前。  その石田は、いつも2、3人のお供を連れて、何だか偉そうに「道の駅」なんかにいる。  ここは田舎だから繁華街もなくて、道の駅だ。 休日には観光客が少しは集まって来るが、平日は閑散としている。  それでも、観光客の車が出入りするだけ他の所よりはわずかながら,賑わいを見せている。  和彫り野郎、石田たちはそんな道の駅の無料のベンチでたむろしているようだ。 「あーあ、クソ面白くもねぇ。何がラップだよ。 俺は国語の成績悪かったんだよ。音楽なんていつも1だった。」 「それは石田が音楽の先公、泣かしたからだよ。」 「ラップを聞いてるのは、おもしれぇけど、な、やるのはムズいな。」  石田の家は、昔は羽振りのいい網元だったが、今は観光地引き網で細々と暮らしている。  流行らない漁師は兄弟誰も後を継がなかった。 兄は地元の郵便局に勤めている。    石田の他にも、定職に就かないでブラブラしている同級生が何人かでつるんでいる。  みんな金がなくてピーピーしてるのは共通だ。 特に石田と一緒にいるのは、省吾とキヨシだ。  学校も続かない、仕事も続かない、何をやっても面白くない。真剣になれるのはパチンコやってる時だけだった。  いつも省吾が親の軽自動車を持ち出して、都合のいい、運転手を押し付けられている。 「兄貴も今じゃ郵便配達だけど、昔は車好きでゴージャスに改造したプレジデントに乗ってた走り屋だったんだぜ。」 「だったら、石田も自分の車でカッとんだらいいべ。」  省吾は運転を押し付けられておもしろくない。 「まあまあ、省吾がいなくちゃ、ここにも来れないよ。感謝してます。」 と、温厚なキヨシが言う。 「そう言えば、この前のラップ、DJとかやってたの、俺たちが中学の時、カツアゲした犬村じやね?」 「そうそう、カツアゲしても金持ってなかったやつだよ。学校来なくなってそれっきり。」 「転校して来たばっかりだったけど、学校辞めちゃったんだっけ?」 「中学って辞められねぇべ。 不登校って言うんだよ。」 「そう言えばラップに来てたの、何人かはK中の奴だったよな。俺たちの白浜中、来なくなって、犬村の奴、K中の奴らと遊んでんだな。 生意気だな。俺にバトルふっかけて来たのもK中の奴だ。」 「スゲェー過激で怖かったよな。」 キヨシの言葉に、 「ふざけんなよ! 奴らの方がビビってただろ、俺の紋紋に、よ。」

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