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第30話 闇金
松田に借りた10万もパチンコではあっという間だった。10万、もう10万と、何回か借りて、石田は返す宛もないので松田に呼び出された。
「石田の坊ちゃん、返す金、ないんでしょ。
ちょっと仕事してもらおうか。」
本物ヤクザに言われると石田は逆らえない。
「松田さん、父ちゃんの顔で、もうちょっと待ってくれないか。月末には兄貴から借りて返すから。」
「ほう、おまえの兄ちゃんはどんな高給取りだ?
もうおまえの返せる額を超えてるよ。
金利ってのが付くんだよ。仕事してもらおうか。」
松田のやっているのは、マチキンじゃなくて闇金だと気づいた時にはもうどうにもならないくらい借金は膨れ上がった後だった。
こうしている間にも一日一日、金利は膨らんでいく。
「いくつか、仕事あるけど、何がいいかな?」
ニヤニヤ笑う松田さんを石田は初めて怖い、と思った。しずかな口調が恐怖心を増幅させる。
松田さんと親しく口を聞くようになったのは、去年ぐらいからだった。
何をやっても長続きしない性格で、毎日パチンコ屋に入り浸っていた。この頃は親父に小遣いをせびるのも厳しくなっている。
パチ屋でよく見かけるヤクザ者。顔は子供の頃から知っている。
昔、親父が網元だった頃、ウチで働いていた漁師だった。厳しい漁師に見切りをつけて、今は地元のヤクザになっていた。
「石田の坊ちゃん、事務所に遊びにいらっしゃい。」
松田さんは家の仕事を辞めた今でも、町で会うと石田に声をかけて来る。
一緒にいる同級生の手前、石田もちょっとカッコつけて見る。
「石田、ヤクザと知り合いなんだ。スゲェな。」
省吾とキヨシにちょっと自慢だ。
何の変化もない田舎町で、暇を持て余している若者にはヤクザは興味深い存在だった。
そんな訳で石田三成はM会の事務所に顔を出すようになった。
ヤクザの事務所は入り口の鴨居のところに組の名前が入った提灯がズラッと並んでいて、初めはビビったものだ。
壁には破門状が所狭しと貼り付けてある。
掟を破った者は全国に回状が廻るらしい。今時だが、紙の破門状は必要らしい。
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