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第37話 犬塚神社 2

「探しに行かれますか?」 巫女は石田を煽るようにそそのかす。石田は一度家に帰って出直してくるか、悩んだ。怖いのだ。  そして帰ればヤクザの取り立ても怖い。次に来た時この場所が見つかる保証もない。今しかないのか。  だいたいこんな巨大な石が宝物だなんて、いくら価値があっても盗むことも出来ない。もっと他に高価なお宝はないのか、と巫女に聞いてみた。 「あなたは欲深い人ですね。 この橋を渡って奥に進めば何かあるかもしれませんね。」 「よし、行こう。」  石田はついに石の橋を渡ってしまった。ハヤる気持ちで、巫女の前を歩いて石の橋の先へ進んだ。生い茂った木々の先の方は、洞窟のようだった。 「ここを進むのか?」 不安になって、振り返って巫女に声をかけたが、もう巫女の姿は無かった。 「あれ、どこに消えたんだろう。今まで後ろから来ていたのに。」  危険を感じた石田は戻ろうと振り返ったが、今度こそ何もない、後ろに道は無かった。そこにはただ霧がただよっているたけだった。    石田の父親は何か胸騒ぎがしていた。石田は三人兄弟の出来の悪い末っ子だった。  母親は10年前に癌で亡くなった。選挙騒ぎの末破産して苦労の中、死んで行った。  石田はいつも遊び歩いて、2、3日帰って来ない事は珍しくない。心配しても仕方ないと父親は諦めた。  石の橋を渡ったと思ったら、なんだか訳のわからない所に一人でいる自分をどうしたらいいのか 石田三成は途方に暮れた。  なんと言ったらいいのか、自分は今どんな所にいるのだろう。  立っているのか、浮いているのか、上か下か、何もわからない。  霧に巻かれているようだ。周りには何もないのがわかる。さっきまでの道も草も神社の壁も、何もない。  どこに立っているのか、立っていないのか。 灰色っぽい霧の中をもがく,足掻く。心もとない。 「巫女さーん!」  大声を出しても、近くには誰もいないのが感じられる。  石田は寂しかった。この感じは寂しい、という事だ。怖い、より、寂しいと言う感じ。普段感じる寂しさの何倍も寂しい。  ずいぶん時間が経ったような、まだいくらも経っていないような。

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