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第40話 ラッパーたち

 犬の散歩で、八犬士だとオショーが言ったメンバーが、何故か神社の社務所に集まるようになった。犬も一緒だ。  それぞれ人見知りだと思っていたが、馴染むとよく話すようになった。    昨夜、夢にうなされて、中学の時のメイ先生を思い出した琥珀は、長い間一人胸にしまっていたメイ先生のことをみんなに話してしまった。  傷を舐められた事。まだリストカットはやめられない。サイコが気づいたように言う。 「メイ先生ってサイコパス?」 琥珀は慌てて、 「俺はみんなに聞いてもらって、気持ち悪さもおさまったよ。」  今日の琥珀は普通のパーカーとジーンズ。男の子らしいカッコだ。女装も似合うけど、こうして見ると美少年だ。  たまたま来ていた、サイコ、鉄平、ナナオ、ジョー先輩、タイジたちが、気持ち悪い思い出を共有してくれたようで心強かった。 「先生を悪く言うつもりは無いんだ。」 タイジが 「メイ先生って俺の担任だった。 琥珀より何年か前だな。」 「えー覚えてるのかよ。」 「何か見て見ぬ振りをする、事なかれな先生だった。ズルいというか、無関心というか。 生徒にそんな関わり方をする人だったのか?」 「舐めるって凄くない?」 「メイ先生ってオショーの親戚だよね。 この神社のどこかに住んでんだよ。」 「じゃっ、この話、オショーにした方がいいのか? 悩むなぁ。」 みんなが騒がしくなった。 「お黙り!琥珀のプライバシーなんだから! 必要なら琥珀が自分で言うよ。」 サイコの一声でその場は収まった。  琥珀はその日以来、怖い人だと思っていたメイ先生の事が気になり出した。なぜか琥珀には メイ先生は孤独の影が付きまとっている男、に見えるのだ。 (哀れな魂。) 何故だろう、この言葉が頭に浮かぷ。  メイ先生の事が頭から離れない。気がつけばメイ先生の事を考えている。  今の琥珀より23才も年上、40才になるメイ先生。  それで神社に行くと、裏の離れの方を気にするようになった。 (偶然でもいいから会いたい。 この気持ちは何だ?先生は男だよ。) 自分がわからなくなった。

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