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第42話 メイ先生と阿南先生

 メイはサイコパスだ。必要もないのに人を追い詰める。  10年前、石田の父が県会議員に立候補するのを 強力に後押しした。  教師の立場を考えながらも、様子を見ながら追い詰める。絶対に無理だ、とわかっているのに、有力者を集めて口車に乗せる。  誰も五月雨が私利私欲で動いているわけではないと知っているので,その話に乗ってくる。  自分のためではないのにありがたい、とすら思う人が多い。  五月雨は金には興味ない。神社もそこそこ収入があるから、金のためではないとわかるとみんなが信用する。親切な応援に、周りが感謝した。  ついに選挙は終わった。惨敗だった。 石田の父は破産した。メイは無傷だった。みんなが感謝する。ただの親切な応援者。  こんな事をするのがメイなのだ。 生徒の進路指導にも熱心だった。そして夢を打ち砕く。知らず知らずのうちに生徒に絶望を与える。何故か、生徒は五月雨に謝る。 「先生の期待を裏切ってしまった。ごめんなさい。あんなに親身になってくれたのに。」 「いいよ、いいよ、頑張ったんだ。 併願の学校だってきっといい所だよ。」  その美貌で慰めればみんなが感謝する。 五月雨は何も感じない。  でも稀に本質を見抜く者がいる。 「メイ先生って、目が笑ってないよね。」 「冷たい人だよ。」  人気の裏でアンチもいる。 「なんで、どうでもいい事に首を突っ込むんだ。」  五月雨を叱るのは、同僚の阿南先生だけだ。 その二面性に校長も騙される。  タイジが中学の時、転校してきて初日に呼び出された。ヤンキーたちは、4、5人でつるんで、呼び出したタイジを順番に殴った。  一人を多勢でやるなんてダサい。しかし、ここでは普通なんだろう。  顔を腫らして教室に戻っても担任のメイ先生は見て見ぬふり、だった。  転校早々トラブルを起こすのはこっちが悪い、と言う事だろう。  この中学に一人だけ話の出来そうな先生がいた。阿南先生。  柔道部の顧問で、隣のクラスの担任だったが、タイジが顔を腫れ上がらせて教室に戻る時、その先生とすれ違った。 「おい、待て。やられたな。犬村っていうのか。 放課後、体育館の横の武道場に来い。」  筋肉質で強そうな先生だった。 放課後、恐る恐る武道場に行くと、阿南先生はもう筋トレをしていた。 「おまえ、初めて見るな、転校生か?」 話すと優しそうだ。 「石田か。あいつらは札付きだ。 地元で顔が利くからやりたい放題だなぁ。  教師も何も言わない。俺がいれば何とかしたんだが。  教師の監督不行き届きですまん。」

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