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第44話 五月雨メイストーム

 ベッドの中でメイは優しかった。琥珀は混乱している。 (どうしてここにいるんだっけ。 なんで、俺、メイ先生に抱かれてるんだ? 気持ちが高まったらおいでって言った。 待ってるよって。)  琥珀はあの日から心を奪われたようにメイ先生の事ばかり考えていた。  そしてとうとうメイ先生の家に来てしまった。 初めての経験に戸惑う琥珀にメイは優しかった。 「キミは大切なたからものだから。」  先生に抱かれて、それでも最後までは出来なかった。メイ先生は無理しないで髪を撫でてくれた。優しい口づけ。 (先生は素敵だ。こんな素敵な人に抱かれてるのに、ごめんなさい。最後まで出来なくて。) 「今日はここまでにしよう。全部出来なくても、琥珀と愛し合えた。また、今度だね。」  こうして1週間に2日だけ、休日の土曜と日曜にはこの家に通ってくる。  週末は二人の秘密の時間。いつもレッスンみたいにセックスをした。  琥珀は不安だった。メイ先生の事しか考えられない自分が。 (こんな事では、すぐに飽きられてしまう。 きっとメイ先生は他の人も抱くのだろう。 拙い俺では、ダメだ。)  こんな自分は嫌だ。つまらない人間になってしまう。琥珀はあの八犬士仲間に会いに社務所に行った。たまたまジョー先輩が来ていた。犬の荘助も一緒だ。 「久しぶりだね。今日はケノはいないの?」 「ジョー先輩、俺、俺、、」 不覚にも涙が出てしまった。ジョー先輩は華奢な琥珀に抱きつかれて緊張している。 「何だよ。しばらく会わなかったから、何かあったのか?」 優しそうなジョー先輩に甘えたくなる。 「俺、汚れてしまったかも。」 ジョー先輩は何だか清潔に見える。 琥珀は自分はみんなからずいぶん遠く離れてしまったような気がした。 (男に抱かれてるなんてみんなが知ったら。 俺はもう戻れない。真っ当な恋とは程遠いところに来てしまった。ジョー先輩がすごく清潔に見える。)  荘助がクーンと鼻を鳴らして嗅いでくる。その鼻面を撫でながら、犬は平等だな、と安心した。 「何言ってるの?琥珀は可愛いよ。汚れてなんかいないさ。」 この胸に飛び込んで優しく慰められたい、なんて思ってしまった。

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