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第45話 迷いから抜け出せない

 ジョー先輩と少し話をして、犬と遊んで琥珀は家に帰った。  自分一人の部屋で、またメイが恋しくなっている。メイ先生の匂い。思い出して切ない。 (俺、変態なのかな。忘れられない。 後ろめたさと背中合わせのこの気持ちを持て余す。)  優しく身体を触られたい。目を開けば死ぬほど綺麗な顔に見つめられる。 「先生は綺麗だ。あんな事しても嫌じゃない。 俺は先生と、あんな事したんだ。」  また、会いたくなってしまう。 「土曜日には会いに行ける。」 自己嫌悪と恋しさで頭がグルグルする。 「二人だけの秘密だよ。」  先生の言葉がおぞましくもあり、嬉しくもある。 「俺、どうなっているのか。 先生の事が好きなのか、嫌いなのか、 自分でもよくわからない。」  この先が見えない。 「琥珀、どうした?なんか悲しそうだよ。」  土曜日、先生の家を訪ねて来た。 顔を見るとすぐにハグしてキスしてくれる。 うれしいけど、扱いが慣れているのが辛い。 (きっと先生にはセフレがたくさんいるんだ。) ひっきりなしにメールの着信音が鳴る。土曜の夜だ。 「出たら。電話。」 「ああ、いいんだ。」 「でも会いたがってる人がいるみたい。」  抱き寄せてキツいくちづけをされた。 「今は琥珀と二人だけ。誰も邪魔出来ない。」  ベッドに座って 「何考えてるの。僕が嫌いになった?」  その顔を見ると抱きついて 「嫌いになんてなるわけない。」 (こんなに好きなのに。)  一人になると自己嫌悪に気が狂いそうだ。 もう、何もないような顔をして、みんなに会えない。この5日間、繰り返した葛藤が、先生の顔を見ると消えてしまう。  早く抱いて欲しい。欲しくて抱きついてしまう。 「その顔を他の奴に見せるなよ。可愛すぎる。」  髪にキスしてベッドに寝かされる。もういつもの愛撫を待っている。 「琥珀、可愛いよ。」

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