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第49話 白浜ベース

 オショーは寂れて行くばかりのこの町を何とか盛り上げたいと考えていた。  それでラップバトルなどを開催しているのだ。町には若者が極端に少ない。  この町は働く所も限られているし、魅力がないのだろう。  老人と若者が分断されている。老人と言っても戦後生まれの人間は興味深い話をたくさん持っている。  神社にたむろしている年寄りたちと話すと面白い。タイジのばあちゃんは特に、楽しい。気が若いからだ。  啓ちゃんも昔はギンギンのロッカーだった。 サーフショップのコージさんもサーフィンを通していろんな事を知っている。 「必要なのは、箱、だな。」 オショーは以前から海岸沿いの空き地に目をつけていた。集まれる場所。    タイジのばあちゃん、咲耶さんに声をかけた。 「何か、やりませんか。ライブハウスとか。」  軽く振ってみたら咲耶ばあちゃんは、話に乗ってきた。 「あたしも考えてたんだよ。 コージさんのサーフショップの隣にある古い土産物屋、あそこはどうかな。  あたしとじいちゃんが新婚当時住んでいたんだ。じいちゃんの持ち物だよ。」  新婚当時、干物とかハマグリを売る店だったと言う。 「今はボロボロで住めないようだけど、あの場所はいいだろ。少しだけ海が見える。」  オショーは神社の資産から少しは資金を出せそうだと考えた。  神社の仲間たちとはラップを通じて出会ったけれど、明るく元気な若者ばかりではない。  ヒップホップが好きな今風の若い奴もいるが、 オタクな奴もいる。  なにか好きなものを持ってる奴はカッコいい。 一口にオタクと言っても様々な「推し」があるらしい。好きなものを通じて仲間ができたりするのも大いに結構だ。  そのためにオショーは神社を開放している。 口コミでここを知った、と言う人が来る。  大歓迎だ。若者が行き場を見つける手伝いをしたい、と思っている。  オショーは79才、老人と若者を繋ぎたい。 老害なんて言わせない。人口のほとんどを老人が独り占めする時代がすぐそこに来ている。 「白浜ベースをつくろう。」

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