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第51話 ドラム
この前、先生のドラムの音を聞いただけで、逃げるように帰ったあの日、琥珀は寂しかった。
(先生には引き出しがたくさんある。)
圧倒的に大人なのだ。琥珀の知らない事がたくさんあるに決まってる。
(先生の愛している様々な事を俺は知らない。)
二人だけの時間を作ってくれるメイ先生に不満を持ったのは自分なのだ。
本当は手の届かない所にいる先生だ、と思い知った気がする。琥珀なしの時間をたくさん過ごしてきたのだ。先生は大人だ。近過ぎて怖い。遠くなると寂しい。この気持ちを持て余す。
入母屋造りの離れは外見と違って中は今風のデザインだ。広い洋風のリビング。奥にベッド。
先生が俺を抱く。今まで平気で抱かれていたのに、最後までは出来なかった。先生が俺を壊さないように、無理な事はしなかったから。
(今日は覚悟してきたんだ。)
「可愛いから、風呂に入る前に顔を見せて。」
先生の指が髪を分けてくちづけしてくれる。啄むように唇を吸われる。
(ああ、これが好き。)
舌を入れて来る。
(やっぱり、慣れてる。他の人にこんな事、してるんだ。)
馬鹿なことばかり考えてしまう。
「美人だ。化粧映えがする。もう化粧はやめろ。
可愛すぎる。誰かに盗られそうだ。」
ゆっくりドレスを脱がされる。何にもない平坦な胸がむき出しになる。
「恥ずかしい。おっぱいなんか無いから。」
「僕はこの固い胸が好きなんだよ。
グニャグニャした肉の塊はいらない。
青硬いこの体が好きなんだ。」
先生の舌が俺の胸の突起に吸い付く。
「痛いかい?気持ち良くなるよ。少し我慢して。」
「あ、あん、先生。」
脱がされて中々触って欲しい所にたどりつかない琥珀も先生のシャツのボタンを外す。スーツを脱いでも素敵だ。肌と肌を密着させて抱かれる。
しばらく身体を弄りながら抱き合った。
「風呂に入ろう。」
抱きあげられて、風呂に行く。
(解さないと、ダメなんだ。今までこの手前までだったけど、ついに入れられるのか?
俺、大丈夫かな。)
「大丈夫だよ。痛くしないから。」
その言葉にゾクッとした。
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