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第52話 ジョー先輩と三郎

「何の本を読んでるの?」  ここは病院の談話室。食事が終わると、ここで過ごす。開放病棟だ。  ジョーはこの頃、薬の効果か、自分を律するということが少しわかってきた。  もう退院の許可は出ている。この頃は、いつも話をする三郎という青年がいる。 「ガルシア・マルケスの、百年の孤独。 ジョーは読んだ事ある?」 「無いよ。すごい分厚い本だな。難しそうだ。」 「難しく無いよ。面白い。長い物語だ。 まだ、最後までは読めてない。」  いつも静かに本を読んでいる三郎にジョーは興味を持った。  散歩の時間。病院の敷地を散歩する。 いつも見かける三郎に思い切って声をかけた。  薬の影響か、夢の中にいるようで、フワフワと声をかけたのだ。今までならそんな勇気は無かった。他人に興味も無かった。  今はこの三郎と友達になりたかった。心境の変化だ。可愛い顔にも好感を持った。弟に似てる。 「いつも、違う本を読んでるね。」 「うん、僕は速読を練習してるんだ。 早く読まないと置いて行かれちゃうから。」 「誰に置いて行かれるの?」 「えっ、わかんないの? 地球の自転に、だよ。すごい速度で自転してるから、ゆっくりしてたら真理を逃す。」 「なんだか、わかったような、わかんないような理屈だ。」 「自分の持ち時間は限られてるからね。」  三郎の話は興味深い。なるほど、と思わせる。  ジョーの退院が決まった。父親が手続きした。 「三郎、俺、退院するんだ。親父の許可が出た。 医者の許可も。  サブも出られたら、ウチに遊びにおいで。」 二人の秘密。キスをした。超高速のキス。  ジョーは心臓を射抜かれた。  そしてジョーは社会復帰する。ラップに救われた。犬の散歩で出会ったDJタイジがヒップホップの沼に引きづり込んでくれた。  時を同じくして、三郎も退院したと連絡が来た。ジョーは家に招待した。 「ジョー、変わったね。オシャレになった。 それにタトゥー。お母さんは大丈夫?」  トライバルのタトゥーを見て驚いている。 「サブは音楽とか、何を聞いてる?」 「うーん、日本のグループとか。 アニメの曲が多いな。」 「ヒップホップいいよ。サブはラップ出来そう。 本をたくさん読んでるなら リリックが溢れてくるんじゃない?」

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