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第58話 白浜ベース

 オショーは人の集まる場所を作ろうとしている。かねてより一部の地主たちに働きかけて来た。寂れる一方の海岸に活気を取り戻そうと考えている。  死んだような町を生き返らせるためにアイデアを募った。  初めに手を挙げてくれたのは、咲耶ばあちゃんだった。 「あたしはライブもできるロックバーをやりたいんだよ。孫と一緒にね。」  白浜海岸の入り口には、海側に駐車場がある。あとは立派なトイレがあるだけ。  有料道路沿いのビーチロード側には、廃屋がいくつか残っている。津波対策の高い塀が海岸を塞いで,海は見えない。  一番近いところにはコージさんのサーフショップがある。その隣は空き地だ。  名ばかりの商工会にオショーが声をかけて集まってもらった。 「ここに白浜ベースと名付けていくつかの店をやろうと思うんだ。」  オショーの声かけで、しぶしぶ、古い地主や商店主が集まって来た。廃業した民宿の持ち主たちだ。 「若者が来たくなるような場所を作りたい。」 「例えば、神社に集まる若い奴らは、海の見えるカフェが欲しいんだって。」 「それに、咲耶ばあちゃんがライブハウスやるって。もう動き出してるよ。」  コージさんも呼ばれて、色々なアイデアが出た。 「カフェに併設した本屋か、図書館が欲しいって。」  オショーは琥珀のコスプレを活かしたいと思っていた。コスプレ撮影スポットとか。  ラップバトルに集まった若者たちにも呼びかけた。あの石田が特異な経験を話している。  誰も信じないが、黙っていられないタチなのだ。みんなにあの体験を話している。  オショーは知っていたが、様子を見ていた。 「あのぅ、オレ漫画描いてるんです。」  鈴木翁太(すずきおうた)と名乗る若者が声を上げた。 「オータって呼んでください。 なんかこの土地にまつわる話ってないかな、って探してたんです。  ここにしかない伝説とかを元にお話を作ってここを聖地にするんです。」  石田の出番だ。 「俺、面白い体験をしたんだ。 漫画になりそうな。」  ジョー先輩が今日は三郎を連れて来ていた。 本が好きなサブは図書館カフェのアイデアに目を輝かせている。

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