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第61話 コスプレ
「ずっと会えてない。
琥珀はもう僕なんかいらないのか。」
いつも琥珀の事を思っている。五月雨は急ぎ過ぎたのだ。この手に抱きしめたいと焦ってしまった事は否めない。
(こんなに琥珀の事ばかり考えているから、怖がられるんだな。)
落ち着くためにいつもドラムセットの前に座る。ラディックのシルバースパークル。
一心不乱にドラムを叩く。この時だけは琥珀から意識を離す事が出来た。
演奏を終わらせてため息が出る。
「琥珀に会いたい。会っても分かち合うものがない。琥珀は何が望みなんだろう。」
いつもコスプレをしているのを思い出した。
「琥珀のコスプレを活かす方法は無いかな。
琥珀が打ち込める事。」
五月雨はオショーに相談する事にした。
「オショー、白浜ベースはどう?進捗状況は。」
神社のオショーの部屋を訪ねた。
「おお、珍しいな、五月雨が来るなんて。
白浜ベースに興味持ってくれたのかい、嬉しいねぇ。」
ザックリと説明してくれた。白浜ベースの予定地にはまだ余裕がありそうだ。
サーフショップとライブハウス。図書館カフェのための広めのスペース。行政を巻き込んで箱を作るそうだ。
古い民家がある。躯体はがっしりしているので、何か改装して店をやろうと言う。
オショーの話に五月雨はひらめいた。
「この古民家を改装してコスプレショップをやるのはどうだろう。」
思い付きで言ってみた。
「僕の元教え子でコスプレをやってる子がいるんだよ。」
「ほう、面白いな。漫画を描いてる若者がいて、
ここを聖地にしたいと言っていた。
コスプレで撮影会なんてのも有り、だな。」
五月雨は琥珀が喜んでくれるような気がして嬉しくなった。珍しくサイコパスな下心は微塵もない。これで堂々と会える。出来ればプロポーズだって。
オショーが
「五月雨にも、やってもらいたい事があるよ。
咲耶さんのロックバーにハコバンを頼まれてるんだ。」
「ハコバンってライブハウス専属のバンドって事だよね。」
「そう、そのメンバーに五月雨も入れたいんだってさ。ドラマーとして。」
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