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第64話 犬遠藤崇彦

「ヒップホップは好きだよ。 でも、ブルースで育った世代なんだ。」  ばあちゃんが、 「タイジ、崇ちゃんは犬を連れて旅をしているんだって。大角と気が合うといいねぇ。」 タイジはハッとした。 (大角は八犬士だけど、犬遠藤さんの犬もかな?そう言えば名前に犬の字がついている。) 「ワイマラナーっていう犬種なんだよ。 孫が可愛がってる。  おとなしい賢い犬だが、犬連れで入れない所も多いんで、旅はけっこう苦労なんだよ。  こちらの大角くんは歓迎してくれたようで良かった。ディーキーって言う名前だ。)  タイジは玄関にいるディーキーの所へ行って聞いてみた。  小さい声で 「大角、ディーキーとは仲良くなれたかい? 話は出来るのかな。」 「大丈夫です。ボクも人語を解する犬なので。」 「よし、わかった。オショーに紹介しよう。」  犬との密談は終わった。  居間に戻って 「犬遠藤さんは、しばらくこの町にいるんですか? だったら面白い人がいるので紹介したいんですが。」 「実は人探しをしていて、これからの事は未定なんだよ。孫は九十九里に来たみたいなんだ。最後のメールの手がかりはそれだけ。」 「ばあちゃん、オショーに紹介しようと思うんだ。」 「それはいいね。オショーならこの辺りの事は何でも知ってるだろうから。  きっと、お孫さんは見つかるよ。」 「お孫さんって?探してるのは若い人なんだ? この町は狭いから、オショーならわかるよ。」  探してる人の情報を教えてもらった。 「女の子だ。16才だったと思う。 犬遠藤粟生って言うんだ。  痩せっぽちで少し生意気な感じだ。」 犬遠藤さんは孫が可愛くてならないようだ。  タイジはこの前のラップバトルが終わった頃、サイコが話していた女の子を思い出した。 (あの子はたしか神社の玉梓さんの所にいるはずだ。)

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