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第66話 泣きたい気持ち

 琥珀は自分の女々しさに打ちのめされた。 (やっと会えたのに、何も出来なかった。)    社務所に来てみんなで雑談している。 琥珀はケノを撫でながら 「なんで、いきなり唸ったんだ? ケノはメイ先生が嫌いなのか?」 「変な奴だな、メイ先生って。 俺たちは学校、違ったからメイ先生ってよく知らないけど、イケメンは有名だったな。」  鉄平とナナオはメイ先生を名前だけは知っていた。 「犬、嫌いなんだな。 俺は仲良くなれないよ、あんな人。 大体あの女が失礼だよな。」  琥珀は泣きたくなった。自分の大好きな犬のケノ、とメイ先生が仲良くなれないなんて。 「鉄平とナナオは犬の散歩に来たのか?」 「ああ、ジョーとサブがここで会おうってメールが来た。みんなに会いたいって。」 「あいつら、仲いいよな。リア充だ。 ゲイのカップルでも羨ましいな。」 「俺も彼女欲しいな。男でもいいよ。 琥珀、俺と付き合わない?」 「ひでぇな。おまえを殴らせないでくれ。」 「ごめん、そんなに悪い事言ったか? 怒ったんならごめんよ。」  琥珀は自分の性癖を嘲笑われたと感じた。鉄平もナナオも琥珀の性癖なんか知る由もないのに。 神経質になっている。  境内で犬を少し走らせた。他の犬たちも走り回ってる。神社では誰もいない時はリードを外している。慣れたものだ。ケノが近づいて来て言った。 「琥珀、先生の家に行っちゃえば。 きっと先生は待ってるよ。」  ケノの頭を抱きながら,涙が溢れて来た。 「俺、ヘタレだ。メイ先生をあの娘に取られちゃうよ。」  ジョー先輩とサブが犬を連れてやって来た。 「なんかあった?」  みんなが機嫌悪そうで、サブが不思議そうに聞いた。  犬たちは合流してコロコロとじゃれあっている。楽しそうだ。 「ジョー先輩はメイ先生って知ってるか?」 「いや、名前だけだ。よくは知らない。学校が違ったから。神社の人なのは知ってるよ。  見た事は、ある。カッコいい人。イケメンだろ。」 「そのメイ先生が来たんだけど、犬たちが猛烈に嫌がって、イヤな雰囲気だったんだよ。  カッコいい先生だと思ってたけど、犬嫌いな奴なんて碌なもんじゃねえな。」 「そうそう、犬嫌いな人に善人はいない。」  ジョー先輩とサブはしっかりと手を繋いで仲良さそうだ。琥珀は羨ましくて見惚れてしまった。

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