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第67話 五月雨の家

 五月雨は自分の家に帰って来た。あの女の子がついてくる。迷惑だ。 「先生、お家にお邪魔してもいいかな?」 「ダメだよ。男の一人住まいだから。 玉梓の所にお帰り。」 「じゃあ、車に乗せて。どこかにドライブ。」 「今日はもう帰ろう。じゃあな。」 冷たく家のドアを閉めた。  神社に用があったのにすっかり忘れてしまった。 (メイ先生、やっぱり素敵だわ。 いつかきっと振り向かせてみせる。 いつでもセックスさせてあげるのに。)  粟生は、男はみんな身体を求めてくる、と思っていた。そうやって暮らして来たのだ。  この頃は玉梓の目が気になって、男と遊んでいない。チヤホヤされたい欲求に我慢出来ない。 (メイ先生は教師だから頭が固いのね。 絶対に落としてみせるから。) 厄介な娘だった。  五月雨は琥珀に会いたかった。もしかしたら、と神社に行って、案の定、琥珀はいたが犬に嫌われてしまった。 (あの犬と仲良くならなければ、琥珀に認めてもらえない。)  昔の五月雨なら、犬を遠ざける事を考えたが、琥珀は犬を大切にしている。  神社の犬のシノとは仲良くやって来たつもりだ。オショーに相談するか?  犬と仲良くして琥珀の喜ぶ顔が見たい。  琥珀はケノに言われてメイ先生の家に来てしまった。ケノは社務所で待っていると言った。    ドアの前で躊躇している。 いきなりドアが開いた。 「琥珀、来たのか? その辺にあの娘がいるかもしれない。入って。」  先生にハグされて膝が震える。 「キスしてもいいかい?」 そう言ってくちづけ、された。初めはバード。小鳥が啄む。何回も、してやがてディープなキス。  先生のやり方。覚えてしまった。背の高い先生の首に手を回して抱きついた。 「先生、会いたかった。ごめんなさい。」 抱きしめているこの手を離したくない。先生なしで今までにどうやって息をしていたのか? 「ダメだよ、琥珀が欲しくなる。」  五月雨のベッドで抱かれている。信じられない。今日は普通に男の格好で来た。可愛い女の子じゃない。 「先生、俺、可愛くないだろ。」 五月雨は琥珀の髪に鼻を埋めて囁いた。 「琥珀に触れたかった。この手に抱きしめて離したくない。また、前みたいに来てくれるかい?」  前にレッスンみたいに通って来たことを言ってるんだ、、と思うと顔が真っ赤になった。  あの頃は好奇心で大胆になっていた。家に帰って嫌悪感に苛まれた。  いつだって、メイ先生はブレてない。 今なら本当に愛し合えるかもしれない。  

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