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第68話 五月雨の過去
五月雨は琥珀と出会う前、多くの女性に迫られうんざりして来た。
都会のハッテン場で男を探す。洒落た行きつけのゲイバーで、自分の審美眼に叶った美しい男だけを相手にする。
生徒や学校関係者、同僚、は絶対に避けて来た。誰にも深く関わる事はなかった。
一回か二回、セックスをしたらそれで終わり。
長く付き合う事もなかった。冷たく切り捨ててきた。人間関係は、考えるだけでイヤな気持ちになる。
五月雨は、昔から自分の大切な人、というのをどう扱っていいのかわからなかった。
大切だ、と思う人も特に現れなかったから、益々人嫌いは昂じていった。
それからは自分一人で生きて行く覚悟をした。何があっても、何を言われても、気にしない、冷たい心を持ち続けて来た。
琥珀に出会うまでは。
腕の中の琥珀。こんなに誰かを愛した事はない。少年の面影を残したその寝顔。
うっすらと髭が伸びている。
(男なんだ。もっと生意気になってくれ。
僕に逆らって逃げようとしてくれ。たまらない。)
こんな小動物のような少年が腕の中にいる喜び。体の大きな五月雨は繊細な琥珀を抱き潰してみたい。ふとした拍子にイジメたくなる。
悲しそうなその顔を見ると心が千切れそうになる。自分が引き裂かれて行く。
腕枕で寝顔を見つめていると琥珀が目を開いた。
「わっ、先生。俺、眠っちゃった?
ごめんなさい。なにもしなかったね。」
気がつけば上半身裸で抱き合っていただけ?
肌を合わせて温かくて気持ちいい。
「こうして抱いているだけでもいいんだ。
でも、琥珀をもっと気持ち良くしてあげたい。」
もう遅い時間だ
「あ、ケノを迎えに行かなくちゃ。」
ベッドから出て、また、メイ先生は琥珀を抱きしめた。胸を触る。
「可愛い」
「ぺったんこの胸だよ?」
「それがいいんだ。まだ、少年の匂いがする。」
「それってかなり恥ずかしいね。」
胸の突起を口に含まれてビクッと身体が反応した。
「可愛いな、これ。」
「やめろよ、女みたいだ。」
「今度は女装しておいで。女装した琥珀を犯したい。今日はもうおかえり。泊まれないだろ。」
名残惜しい気持ちで帰り支度をした。
「送って行こうか。」
股間は勃起していた。痛いくらいに。
(先生も、だ。我慢してくれてる。)
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