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第69話 白浜ベース始動
ラップバトルをきっかけに近隣の若者が集まるようになった。暇そうな年寄りも出て来てちょっとした交流の場になっている。
「せっかく九十九里の海があるのにもったいないよね。」
漫画を描いているオータが以前から言っている。
「なんかアニメで、実在の場所が出て来ると、聖地とか言って人が集まるんだよ。
そうしたら、コスプレも出来るし、町おこしになりそうだよ。」
地元の年寄りが
「いいねぇ、寂れるばかりの白浜も、聖地になったら賑わいを見せるかも。
ここは里見八犬伝の地なんだよ。死んだ爺様が言ってたな。
オショーなら何か、神社の言い伝えを知ってるだろ。」
「八犬伝には、この地で昔から伝わっている事もあるようだ。」
とオショーも言った。オショーは、どこまでなら話せるだろうか、と考えていた。
玉梓の事は説明しにくい。今までも、その存在を追及しなかったから。
でもフィクションなら面白いかもしれない。
この所、白浜海岸は今までになく活気づいている。
少し離れて古民家とは趣の違う、でも、古びている事は古民家に引けを取らない建物がある。
タイジのばあちゃんの所有だった。
「この家は、昔はこの海岸の名産品を扱う土産物屋だっんだよ。
拓ちゃんとあたしが新婚の頃、この2階に住んでいたんだ。懐かしいね、昭和の匂いがする。」
大部分リフォームが必要だけど、ここに店を作る、とばあちゃんは言い出した。
「ライブも出来るロックバーを作る。
前からやりたかったんだよ。」
「琥珀もコスプレショップのようなのをやりたいって言ってたな。」
琥珀たちのコスプレショップは思いのほか、早く実現した。オショーの猛烈なプッシュがあったらしい。
古民家を改装して中は今風に使いやすくなっているが外観は昔ながらの大きな寄棟の屋根があった。
オショーは玉梓と五月雨の行く末を案じていた。五月雨は中学教師という固い仕事があるが、玉梓の若くて健康な存在を、危惧していた。
オショーの一押しで、この家を玉梓に任せようと考えた。
玉梓は、大きな屋根の古民家の玄関に一枚の藍染の布をかけた。
『無頼庵』(ぶらいあん)と染め抜いてある。
玉梓のアイデアだった。
「ブライアンって40数年前に飛行機事故で亡くなった私の旦那様よ。五月雨の父なの。
こんな暖簾をかけていたら、どこかから現れそうでしょ。」
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