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第72話 不穏
琥珀もやって来た。今日は可愛いJKスタイルがよく似合う。
「なんだ、可愛い娘がいるじゃん。」
五月雨が離れた場所にいる。琥珀が来たから、喜んだのも束の間、先に話しかけられてしまった。
「ねぇねぇ、この辺に住んでんの?
キミ、可愛いね。」
頬を撫でようとしている。サッと逃げた。
「なんだよ、気取っちゃって。
粟生なんか会ったその日にやらせてくれたよ。
この田舎もんが。」
粟生が間に入った。
(琥珀がチヤホヤされるのは許せない。)
「やめなよ、トオル。それよりバンドやってんのに楽器持って来てないの?」
彼らはすぐに演奏させられるとは思わなかったらしい。
集まって来たいつものメンバーに絡み始めた。
サブの肩を抱いて守ろうとしているジョーを見つけた。
「何、おまえら出来てんの?
ホモ?キモいなぁ。」
ジョーの顔色が変わって胸ぐらを掴んだ。
振り払ったトオルは、いきなり矛先が琥珀に向いた。
「こっちの可愛い娘がいいなぁ。
女の子らしくて。」
肩を抱こうとした。
「トオル、やめなよ。そいつオカマだよ。
お・と・こ。」
粟生の声に
「わあ、キモい!ここはホモだらけなのか?」
言い終わらないうちに殴り飛ばされてトオルの身体が吹っ飛んだ。
すごい力で五月雨が殴り続けている。胸ぐらを掴んで立ち上がらせ、もう一回殴りつける。
殴る事を楽しんでいる。形相が変わった。こんな五月雨を誰も見たことがない。
瞳孔が開いて獣のようにしなやかに殴り続ける。美しいケモノ。
「やめて!トオルが死んじゃう!」
粟生が叫ぶ。翔とハヤシと呼ばれた二人も
ジョーとナナオに捕まっている。
元力士のナナオに、誰も勝ち目はない。意外とジョー先輩が殴り慣れている。
喧嘩上等、の鉄平は手を出さないで我慢している。人数が多いのは卑怯だと考えた。
五月雨の殴り方が綺麗で見惚れた。
ジョーと五月雨は目を合わせてニヤリとした。
二人とも強い。
止めなければならないのにカッコよくて目が離せない。
そこにオショーと阿南先生が駆けつけて、乱闘を止めた。
「やめろ!何やってるんだ。
メイ先生まで、何してるんですか!」
圧倒的に五月雨とジョーの勝ち、だった。
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