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第80話 ハコバン 2
「何か飲む?」
咲耶さんが聞いたので五月雨は
「温かい紅茶があれば。琥珀が寒そうだ。」
「お酒も色々揃えてるよ。ウヰスキーに詳しい知り合いがいるんだよ。」
「あ、それうちのおじいちゃんだ。」
琥珀の言葉に
「そう、犬坂さんにこの店のお酒のアドバイスをしてもらってるんだよ。
店のお酒を全部選んでもらってるの。
犬坂さんのケノちゃんとウチの大角が仲良しのようで。犬の繋ぐ縁だね。」
「人のつながりは面白いですね。
僕もシングルモルト、ボウモアとか大好きなんですが、今日は車なので、紅茶にしておきます。」
オショーが来ていた。手には早速ウイスキーグラスを持っている。
「シングルモルトはトゥワイスアップで飲むんだ。常温の水を半分だけ入れて。」
オショーは蘊蓄を披露する。
「実は犬坂さんに教えてもらったんだ。)
そこに粟生とナナオが入って来た。
「なんだ、ナナオもバンドやるのかい?」
「違いますよ。この子が手を離してくれないんだ。俺はラッパーだよ。バンドはやらないよ。」
「ナナオはあたしのクマさんなの。
あたし、ナナオが気に入っちゃった。」
「また、わがままが出てるよ。困った孫だ。
ナナオさん、すまないね。」
犬遠藤さんが嗜めた。
五月雨と琥珀がいるのに気づいた粟生は、五月雨が琥珀の肩を抱いて離さないのを、挑戦的な目で見た。
オショーが
「この店のハコバンを作ろう。本気でね。」
と言った。
「五月雨は亡くなった私の親友、
ブライアン・メイストームの忘形見ですが、ずっと自分の息子のように思って来ました。
今は中学で数学を教えています。
学生時代、バンドを組んでドラムをやっていたようです。
ほら、玉梓から大学時代のバンドの写真を借りて来たよ。」
鉄平が
「わあっ、金髪でロン毛。
裏になんか書いてある。myprettyboyだって。
Maryってサインがある。」
「そんな写真があったんだな。
メアリーが撮ってくれたんだ。」
五月雨の母校は、オショーとブライアンと
同じロスアンゼルスの大学だった。
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