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第81話 ハコバン 3

「卒業と同時にバンドは解散して、僕は日本に帰って来ました。  今は趣味で、家でドラム叩いてるだけで、バンドは自信無いですねぇ。」 「ま、いいじゃないか、やってみようよ。 他のメンバーは決まってるの?」  オショーは楽観的だ。 「私も参加させていただきたい。 しばらくこの町にいるようだから。」  犬遠藤さんは、粟生を見て言った。 それを聞いた五月雨は 「そんな一流の方と一緒にバンドなんて無理ですよ。腕が違いすぎる。」  そばにいた鉄平もナナオも驚いている。 咲耶さんが 「アタシは崇ちゃんを当てにしてるんだよ。 崇ちゃんてのは犬遠藤さんの事ね。  あと何が必要なんだろう。」  オショーが 「ドラムとギターは揃った。あとベースはハヤシだ。出来ればサックスとキーボード。  そして、肝腎なのはヴォーカルだ。」 「粟生、一曲歌ってみるかい?」  犬遠藤さんが粟生を呼んだ 「じゃあ、おじいちゃんが伴奏してくれるなら、 ストーミィ・マンデーにする。」  店にあったマイクを取って、歌い始めた。 犬遠藤さんのギターに,粟生の声が絡む。 「they called stormiy monday」 「すごい粟生ちゃんの声。」 「さすがギターの神様、ストマン進行、半音移動が完璧だ。」  思わず声が出る。 「粟生の歌、すごいね。」  咲耶さんが驚いている。 「ヴォーカルは決まりだ。」  オショーが言った。  ぼうーっと聞いている琥珀に 「琥珀、大丈夫?」  五月雨が耳元で囁く。そして頬にキスしてくれた。誰も気にしないと思ったが、粟生はすごい目で見ていた。  ナナオもそれに気付いて心配そうにこちらを見た。 (教師のくせにホモなのね。許せない。 学校にバラしてやるわ。  琥珀なんか捨てられればいいのよ。) 「学校の先生なのにゲイなんて、絶対ヤバいよな。粟生、あまり言いふらすなよ。」  ナナオの心配に 「ふん、あ、ま、り、言いふらさないよ。 どうせ、すぐ広まるでしょ。」 (先生は何考えてるんだよ。)  悪意のある噂はすぐに広まる。

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