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第88話 反社
ラクダの一件から、犬に助けられて帰って来た。
ケノはシノと一緒に神社でオショーが面倒を見ている。二匹は五月雨に言った。
「琥珀を守ってね。」
五月雨は念を押されて、やっと認められたようだ。
「なんで僕は犬が苦手なんだろうな。」
「メイは何か動物の生まれ変わりかもしれないね。前世は何だったんだろう。犬の天敵か?
たぬきだ!」
琥珀との関係はオショーと玉梓にも認められた。温かい目で見守ってくれている。
ついに五月雨は教師を辞めた。次の仕事を探している。
そんな折、人相の悪い輩が白浜海岸に、集まって来た。粟生にホストの売掛を踏み倒された反社の連中だ。
彼らは岡本さんに無理矢理、売掛をチャラにさせられたが、それで終わらせるわけにはいかなかった。片割れの健太は殺されているのだ。
健太より酷い借金を踏み倒した、粟生を許すわけにはいかない、と九十九里まで来た。居場所はトオルが教えた。
「岡本さんは粟生がお気に入りだから勝手なことを言ってるけど、ウチとしては引込みがつかねぇ。」
「組織でも、岡本さんのいいようにされたんじゃ、ウチの顔が潰れたままだ。」
「生ぬるい事してると他の奴らが言うこと聞かなくなる。」
岡本さんは古くから極成会にいる。組長の弟だと言うことで誰も逆らえない。舎弟とかではなくて、マジで血の繋がった兄弟なのだそう。
ハンパ者でも誰も手を出せない。
そんな奴に気に入られた粟生は、逃げ出さなければ許されたかもしれないが、このままではケジメにならない。同棲していた健太は殺されているのだ。
全力で探し出されるに決まっている。
「あんな小娘に何、手間かけてんだ。」
下っ端の河田と上岡が行かされる。
「殺ってこい。」
金を回収して、跡形もなく殺さなければならな
い。
二人は組のレクサスをあてがわれた。アクアラインを通って茂原北インターから九十九里を目指す。
東金の、同じく傘下のM会に顔を出すように言われた。死体の始末を手伝ってもらう手筈だ。
ナビの案内で、高い塀と監視カメラのたくさんついた玄関の、一目でヤクザの事務所とわかる家に着いた。
「こんな遠い所にわざわざお越しいただいて。」
慇懃無礼な若者が出迎えた。
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