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第89話 反社会的勢力
新宿極成会の構成員、河田と上岡は、九十九里を牛耳る広域暴力団の傘下、M会の事務所に挨拶に立ち寄った。
あの、和彫り野郎石田を追い込んだ松田さんのいる組織だ。松田さんは今懲役に行っているが、留守を預かる松田さんの舎弟の磯村が対応した。
「わざわざ遠い所をご苦労様です。
舎弟頭の磯村です。
今、若頭は府中の方へ行っております。
お話、うかがいましょう。」
人相の悪いことは、お互いに引けを取らない、イカゴク同士。火花の散るような.挨拶だった。 (イカゴク、いかにも極道)
「白浜ベースの話ですね。誰かお探しでしょうか?ウチは血生臭い事には関わるな、と頭(かしら)から言われてますよ。
ここの所、殺しなんて、一件もねえんで。」
東◯警察と仲良くやっていると言う事だった。
波風は立ててもらいたくない、というわけだ。
「極成会はかなり派手な組のようですな。
こんな田舎では大したお手伝いも出来ねえです。」
M会は及び腰だ。闇金で目をつけられているから慎重になっている。
「今日は顔つなぎの挨拶がわりで。
人探しはこっちでやりますんで。
M会にご迷惑はかけません。」
「ああ、白浜ベースあたりに詳しい若者を紹介しましょう。
まだ盃事も済んでいない若造ですが、網元の息子で、兄貴の松田が目をかけていた石田ってのが使えるでしょう。
おい、石田連れて来い。」
若いもんが
「白浜ベース辺りをうろついていますよ。
連絡します。」
白浜ベースの近くの魚料理屋で会う事になった。
「チンピラですが、兄貴が可愛がって揃いの墨まで入れてんです。行けばすぐにわかるでしょう。」
「ちぇっ、チンピラに繋いだだけか。
舐められたもんだな、極成会も。」
文句を言いながら、M会の事務所を出て白浜ベースに向かった。
この所、話題になっている白浜ベース。
ところどころ工事中だが、活気がある。
活き鰯料理の店はすぐにわかった。中に入って行くと、これはまた、イカゴク見習いのような若造がイキって座っていた。
慌てて立ち上がるとペコペコ頭を下げている。あの石田三成だ。
死に損なって,蘇って来たのに相変わらずチンピラ然としている。わざと紋紋が見えるようなシャツを着ている。
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