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第93話 犬たち
犬たちが、みんな集まって来た。ロックバーから粟生の家に走って来た。
一方石田は、粟生の家に入った。
「粟生は見つからない。」
とあの河田と上岡に電話を入れている。
(見つからなくても、こいつとやってからだって鎌わねぇよな。雲を掴むような話だ。
こんな広い所でどうせ見つからないだろ。
どこにいるかわかんねぇし。)
そんなことを知らない粟生は、石田にいきなり抱きついた。
「カッコいい。マジもんの刺青。触らせて。
あんた、名前は?」
「石田だよ。みっちゃんでいいよ。
おまえ、名前は?」
「あおだよ。粟生。犬遠藤粟生。」
石田はビビった。
「なんだよ。おまえが?
こんな所にいたのか。
おまえ、何やったの?
こんなとこにいたらすぐに見つかるよ。
東京のヤクザもんが探しに来てるぞ。」
下着姿で抱きついて来た粟生の動きか止まった。
「ヤバいよ。あたし、殺されちゃうかも。」
車の音がした。ヤクザのレクサスだ。
案内も請わずドアを開けてドカドカと土足で家に入って来たのはあの河田と上岡だった。
「粟生の家はここだって情報が入ったから来てみたら、石田か。知ってて隠したのか?
今からいい事しようとしてたのか?
俺たちを騙せると思ったのか?」
物凄く冷たい声だった。
「この娘が粟生か。まだガキだな。」
粟生はこのチンピラたちにマワされるのか、と観念したが
「岡本さんのお気に入りだから、俺たちは手を
出せねぇ。安心しろ。ヤルわけにいかねぇんだよ。」
粟生は今頃震えている。
「あたしを捕まえるの?
新宿に連れてくの?」
河田と上岡は「殺れ!」といわれていた。
生捕りにする必要はないらしい。いやな仕事だ。
「健太も殺されたんでしょ?
殺される前にあたしとセックスしよう。
あたしも覚悟しなくちゃ。抱いて。」
とんでもない女だ、とヤクザたちは驚いている。
粟生はいつもこうして体を張って生きてきた。
シャレにならない場面でも、何とか体を投げ出してくぐり抜けてきた。
今回はもう,ダメだ。
そこにディーキーが走ってきた。犬たちがワンワン吠えながら集まってくる。
開けっぱなしのドアから犬は入って来た。
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