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第97話 五月雨
五月雨は、任意だが、銃を空に撃ち込んだ事で警察の取り調べを受けた。
銃の出所は?何故撃てたのか?撃った数は?
逮捕された暴力団員との関係は?
根掘り葉掘り訊かれた。普通に何の脚色もなく淡々と答えた。
大学がアメリカで、銃に触る機会があった事。逮捕された暴力団員の持っていた銃だった。あの日あの家で初めて会った人物だ。それ以上の事は答えようがない。
オショーが身元を保証してくれた。元教師だったことも信用された。
帰って来て不安そうな琥珀を抱きしめた。
「粟生ちゃんは大丈夫かな?」
「今度こそ反省してもらいたい。
人には何か役割が必要だ。彼女はやっぱり歌う事を続けた方がいいな。」
「バンドやる事になったら、またメイに何かしてくるよ。嫌だな。」
琥珀は、またリストカットが始まった。メイに会えない時は、家で手首を傷付けてしまう。
リストバンドをしているのを見つかってしまった。悲しそうな五月雨。
「琥珀、僕じゃダメなのかい?
琥珀は何が不安なんだ。僕じゃ足りないのか。」
「ごめん、一人になると怖いんだ。」
今制作中のコスプレの生地に血を付けてしまった。五月雨は琥珀を抱きしめて
「琥珀の寂しさをどうしたら埋められるんだろう。」
何か、落ち着かない日々が過ぎる。
咲耶さんのロックバーでまた、バンドの話が出て来た。あの犬遠藤さんが粟生と一緒に参加したい、と言って来たのだ。
いつも集まるラッパーたちが怒っている。
「なんかズルい大人だよ。」
「忙しそうなのに出来るのかよ。」
「みんな、粟生には気を付けろ。
ハニートラップ女だからな。」
タイジがみんなを代表して聞いた。
「ばあちゃんは、どうしたいの?」
「アタシはハコバンやってもらいたいね。
崇ちゃんを大いに利用したらいいんだよ。
お詫びしたいって言ってるし。」
「粟生も上手いけど、なんか心配だ。
腹黒いじゃん。」
「やっぱ、上手いんだよ。」
みんなが認めている。
「ハヤシ、頑張ってるな。」
ベースのハヤシも上達している。
タイジがホーンを入れたい、と言いだした。
「誰か心当たりあるの?」
メイ先生の推薦する人物だった。
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