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第107話 下◯沢 2
駅前の再開発で昔の雰囲気は薄れたが、老舗のジャズバーは健在だった。有名なM子ママは亡くなったが店はまだやっている。
ライブも出来る店内は壁中レコード棚で、レコードがぎっしりだ。
「いらっしゃい。
あら、サイコ久しぶりねぇ。」
オカマっぽいマスターが声をかけて来た。
「はよう!
今日はイケメン軍団を連れて来たよ。」
「ホントだ。みんなイケてる。カップル?
サイコはお相手いないの?
引っ越しちゃって泣いてる男が山ほどいるよ。」
「やだなぁ、アタシはそういうのいらないんだから。今日はまだ早いからライブは無いのね。」
五月雨がレコード棚を見て喜んでいる。
「凄いコレクションですね。
今かかってるのはブルートレインだ。」
「そう、早い時間はみんな知ってるやつをかけるの。客寄せ、ね。」
「音響が素晴らしいから、ありきたりには感じませんよ。」
「コルトレーンだものね。」
「僕は学生時代によく聴いた。」
琥珀はその頃の五月雨に会いたかった。
(どんなに素敵だっただろう。)
「あら、あなた、見たことあるわ。あまりにもイケメンで覚えてるわ。
あの『再会』にいたでしょ。ハッテン場。」
「えっ?先生、下◯沢知ってるの?」
「ああ、『再会』っていうのはゲイバーなんだよ。僕の行きつけの、ね。」
「先生ってやっぱりゲイなんだ。」
サイコが驚いている。
「こんなイケメン滅多にいないから、有名よ。
すぐ噂になる。」
こんな所で暴露されるとは思わなかった。
周りが好奇の目で見ている。
五月雨は開き直って話をした。
「もう男はいらない。この人が僕の嫁だ。
琥珀って言うんだ。『再会』のママにも言っておいて。」
なんだか、絡んでくる奴がいる。サイコの知り合いのようだ。
「サイコ、今どこにいるんだよ。
おまえの彼氏を忘れたか?」
トライバル柄のタトゥーだらけの男が近寄って来た。仲間が奥に数人いる。
「アンタなんか彼氏でも何でもないよ。
キモいなぁ。」
「下◯沢のフィメールラッパー、サイコはもうやらないのか?」
「絡んでくるなよ。おまえダサいよ。」
男の顔色が変わった。
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