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第108話 下◯沢 3

 下◯沢はアーティストの多い町だ。町全体がアートしている。 「こんな感じの町にしたいね、白浜ベースも。 解放区にするってオショーが言ってたし。」  そんな話をしながら来たのだ。  どこにでもDQNはいる。(DQN ドキュン半グレのようなもの) さっきの奴が懇意にしている『再会』のプロスティチュートを呼んだ。男娼って事だ。  いつも以前、呼ばれた客の事を話している。忘れられない男だそうだ。  自称、美少年。ミカドと名乗っている。売れっ子だ。 「ボク、あんなお客さん初めてだった。 忘れられない。優しくて、セックスが上手で、 顔が死ぬほど綺麗なのに、身体はマッチョで、 あの筋肉に抱かれてボク、死んだね、3回くらい。プロのボクを何回もイカせた男。  忘れられないよ。逢いたい。」  プロの男娼のミカドがいつも言っていた男。五月雨に買われたのが語り草になっている。 「キミはプロだろ。守秘義務はないのか。」 「ああ、メイ、逢いたかった。 ボク、本気で惚れたの。  また来てくれるか、とみんなに言いふらしてた。」  町で遊んでる奴らに、五月雨が来たら教えて、と頼んでいた。『再会』のママにも、だ。    静かに聴いていたジョーが立ち上がった。 背が高いジョーは、トライバル野郎を見下ろす形になった。ゴツい奴だが、ジョーにはかなわないだろう。 「なんだ、てめぇ、ホモ野郎の仲間か?」 サイコが割って入った。 「やめなよ、ヒロシ、まだそんなチンピラみたいな事やってんの?  ミカドって言った?あんた口が軽いね、プロのくせに。」  ヒロシがイキって、表に出ろ、と叫んだ。 「え?え? なんでケンカ売られてんの?」  サブと琥珀はビビった。さすがにサイコは落ち着いている。  ジョーと五月雨は顔を見合わせて、ニヤリ、と笑った。  表に出たら奥にいたDQNたちがゾロゾロと出て来た。 「ダセェ!人数で勝負かよ。 おまえたち、死んだM子ママに顔向け出来ないよ。この店でゴロ巻いてどうすんだよ。」  サイコの啖呵に数で勝ったつもりのDQNたちがニヤニヤしている。圧倒していると踏んだのか 距離を詰めてくる。  店のオカマっぽいマスターが 「止めろよ!警察呼ぶよ。」 「ははは、俺たちここのサツとは仲良しだ。 ◯暴、なんぼのもんじゃ!」 「ミカド、あんたが収めなよ。」

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