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第116話 咲耶さんのロックバー

 夕暮れの海を見て、咲耶さんのロックバーに行った。 「夕陽は見れないんだね。」 「そう、サンライズだけ。朝日はバッチリだよ。」 「いいなぁ、海と暮らすって。憧れだ。」 珍しく五月雨が見せつけるように肩を抱いて来るので、琥珀はハラハラしている。 (知らない人に見られたらまずいんじゃないか? もう教師じゃ無いからいいのかな。)  粟生がヒロシにベタベタするので、ナナオは帰ろうとしている。 「帰るのか?ラップやってよ。 他にも仲間が来てるんだろ。」 「今日はいいよ。気が乗らない。」  ハコバンのメンバーがやって来た。あの犬遠藤さんも来た。 「この店のハコバンのメンバーが揃ったから、何かやりますか?」  下◯沢チームの拍手で、演奏をする羽目になった。五月雨も気分が乗らないのだが。  シングルモルトをしたたかに飲んで、亮たちはご機嫌だ。  仕方なくドラムセットの前に座る。 「軽くブルースを。」  リズム隊の五月雨とハヤシが安定のスタートだ。  粟生がマイクを持ってラブソングを歌い出す。打ち合わせもないのはいつもの事だ。  粟生が男を誘う歌、をセクシーに歌う。 「おっ、中々やるじゃん、あの娘。上手いな。」  有名な犬遠藤さんがいるのに気づかない。知ってる人なら超ラッキーなライブだ。  ギャラリーがやかましい。ラッパーのノリだ。 一曲終わって粟生のMCだ。 「今日はみなさん来てくれてありがとう。 ここ、白浜ベースが段々人に知られるようになって嬉しいです。まだ工事中のところもあるけど 面白い場所になりそうで楽しみです。  ほかでも宣伝よろしくね。 あと、アタシ彼氏募集中です。そっちもよろしく!」  粟生は言いたい放題だ。 「あれ、おまえの彼氏じゃないの? あのでかい奴。」 ヒロシたちにからかわれた。  ナナオはイヤな顔をしている。  サブとジョーもカフェを片付けてやって来た。 「バンドのみんな勢揃いだね。 下◯沢の人たち、チーム名はないの?」  サブの問いに 「強いて言えば、クラッシャーかな。」 「じゃあ、そう呼ばせてもらうよ。」

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