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第118話 ジェラシー

(俺、どうしたんだろう。 あいつ、気持ち悪い奴。)  それでも連絡先を捨てられない。 「琥珀、おいで。」  メイの顔をまともに見られない。 ソファに座って抱き寄せられる。安心する匂い。 メイが守ってくれる安心感。  顎を持ち上げられて見つめられる。 「琥珀、おかしいよ。 何か気になる事があるのか?」 「メイにはなんでもわかるんだね。 あの亮っていう人がトイレで連絡先を渡して来たんだ。」 「そしてキスされた?顔に書いてあるよ。」 「えっ?」  五月雨は、全部お見通しだった。 「僕の琥珀をトイレで口説くなんて、カッコ悪い奴だな。」 「メイ、ごめんなさい。俺に隙があったね。」 「琥珀から誘ってないんだろ。仕方ないよ。 琥珀は可愛いから。不可抗力だ。」  メイの首に抱きついて、許しを乞うような形になった。キスしながら耳元で聞いてくる。 「で、連絡したいのか?」 「しないよ!そんな事。」 しどろもどろで焦って急いで返事した。 「秒で返してくるとは、な。 琥珀は、あの亮って奴のことで頭がいっぱいなんだな。」  一時でも、琥珀の頭を占領した、亮という男。 五月雨は心がざわつくのをおぼえた。  ソファに押し倒して乱暴に抱く。 「メイを怒らせたんだね、俺。」  首にキツいくちづけを受けなから思った。 「そんな事はない。僕だけの琥珀だ。」  首筋に印を刻むように強く吸われた。 「見えるよ、そこ。」  キスマークなんて今まで付けられた事はない。 「みんなに僕のものだってわからせないと、危なくて仕方ない。  こんなものじゃすぐ消えてしまうが。」 いつになく、嫉妬心を向けられている。  琥珀は混乱した。その時、自分の手首が見えた。複数の傷。消えない数。傷なら消えない? 「メイ、俺もタトゥー入れようかな。 メイのものだ、って。」  抱きしめられた。 「可愛いな。」  激しく愛の行為が始まった。 (僕らしくもない。 こんな小さな事に嫉妬している。)  琥珀の身体をこじ開けて貪る。いつになく乱暴なセックス。息が出来なくて口をパクパクしている琥珀。 「可愛い、可愛い。」 「メイ、息が出来ない。」  五月雨がハッとして琥珀を見つめた。 「ごめん。変だね。」

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