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第121話 サブの配信 2
それを見てコメントをくれる人もいる。人は死ぬと何処へ行くのか、というのは永遠の謎だ。みんなが同じ所へ行くわけではない、と思う。
死んだ事がないのでわからない。たぶん、わかった時には死んでいる。
しかしあの世から帰る話はままある。古いものが黄泉平坂(よもつひらさか)だ。
日本神話はなるほど興味深い。どこまでが神話でどこからが史実なのか。 誰も本当の所を証明出来ない。神の存在と同じだ。それとも悪魔の証明、か。
映画やフィクションなら謎が痛快に解き明かされるのだろう。けれど現実は謎だらけだ。
現代の自然科学でも、わかっているのはごく一部だと思う。だからこそ興味は尽きない。
ーー世の中は不合理だ。ーー
コメントにそう書き込まれている。サブの生命の見解に対しての書き込みらしい。
ーー後ろめたさの具現化、それが死後の世界かもしれない。だから千差万別、思念の数だけ『あの世』はあるのかもしれない。
死んだらこうなる、という決まりはないのかも。ーー
それに対するレス。
ーー後ろめたさは心残り、と言い換えてもいい。
臨死体験というのがみんな似ているのは、この世、今生きている世界での情報に過ぎないだろう。同じ情報を、知らない間に共有してしまっているのだろう。
でも死んだら情報は共有出来ないから、それぞれ独自のものになるだろう。
自分の生き様のおさらい、というか。ーー
ジョーの部屋でそんな事を話す。ジョーは優しい。こんな優しい人を他に知らない。尊いと感じる。
ジョーがポツリと言った。
「俺、弟がいるんだよ。暴力的になって傷つけたから会えないんだ。俺を怖がってる。
俺は優しくなんかないんだよ。」
ジョーの首に抱きついてそっとくちづけをする。抱かれている腕の力が強くなって、安心できる。
「弟はなんていう名前?」
「佳(けい)っていうんだ。時々顔を見たくなる。5才年下なんだ。たぶん大学生だ。」
「会いに行こうよ。」
無理だと諦めていた事が、急に現実味を帯びて来る。
「僕たち二人なら出来るよ。」
ジョーの親に言ってみた。今まで許してくれていたサブとの関係を、父親になじられた。
「ホモなんか人前に出せないよ。」
二人、ショックを受けた。父親は、精神病院に入院するような長男のことを恥じていた。
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