122 / 256

第122話 サブとジョー

 父親はジョーが落ち着いているので、今まで見逃してくれていたが、男同士仲良くしているのをよく思っていなかった。  母親はサブに感謝している。人間らしくなったのはサブのおかげだと思っていた。 「佳ちゃんの事、思っていてくれたのね。 嬉しいわ。会いに行きましょう。」 父は 「恥の上塗りだ。 おまえには外にも出て欲しくないのに。」 「あなたはそんな風に息子を見てたの? サブちゃんはいい子よ。家族になりたいわ。 佳ちゃんが望めば、帰って来てもらいたい。」 母親の嬉しそうな顔にホッとした。 「佳が嫌がるならオレが家を出るよ。 サブと一緒に暮らす。仕事も始めたし、ね。」  ジョーはそう宣言した。 図書館カフェには両親とも大喜びだった。 「犬塚神社の宮司様に足向けて寝られないわ。」  サブも親は喜んでいる。本が好きなサブが本に関わる仕事を見つけたのだ。  ジョーの事も理解してくれている。二人は周りから認められている、と勘違いしていた。 「精神障害者、なんだよ。世間から見たら。 健常者じゃないんだよ。」  冷たく言い放つジョーの父。 「健常者の反対は異常者ですよ。 ジョーは異常者じゃありません。 ジョーと僕は、異常者じゃない!」  サブはジョーの父に食ってかかった。 「屁理屈を言うな!」  頭の硬い昭和の父親の典型だった。 「俺はもう27才だよ。大人だよ。」 「おまえは一般常識がないだろ。 佳は大学生だ。悪い影響を与えるな!」  今まで何とかゴマ化して来た事が一気に噴き出した感がある。  二人はオショーに相談する事にした。 白浜ベースを解放区にしよう、といつも言っている。白浜ベースには『無頼庵』がある。  ゲイのフレディも働いている。ジェンダーレスな空間だ。  ジョーの両親がオショーに会いに来た。サブの母も呼ばれた。  図書館カフェで待ち合わせた。  サブとジョーがテキパキと飲み物を用意している。 「素敵な所ね。まあ、ジョーが珈琲淹れてる。」 母は感激している。 「初めまして。三郎の母でございます。」 「ああ、初めまして。譲治の父親です。こっちは母親です。」 ぎこちない邂逅だった。

ともだちにシェアしよう!