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第123話 ジェンダーレス
「犬塚神社の宮司の犬塚です。
みんなからはオショーと呼ばれています。」
サブの母は物書きなのでラジニーシの本も読んでいると言った。オショーの由来も知っている。
サブも母親の本棚で読んでいた。
ジョーの父親が口火を切った。
「単刀直入に申し上げる。ウチの譲治とお宅の三郎くんが仲良くさせて頂いている件だが、お母さんはご存知なのか?」
「二人の恋愛の事ですか?応援してますよ。
そちらによく、お邪魔しているようですね。」
「お母さんは理解があるんですね。
私共はそこまで進歩的ではない。」
「ウチは私が離婚しているので三郎の父親は、この事実を知らないと思います。
でも、私の一存で、認めていますわ。」
「まあまあ、喧嘩腰にならないで。」
オショーが取りなす。
「この頃の流行りですかな、同性愛と言うのは。」
「いや、歴史は古い。昔からあるのです。
プラトニックという言葉は、プラトンとソクラテスの精神的な純愛の事を言う、とされていますが二人とも男です。
同性愛は何ら不自然な事ではない。」
オショーの言葉に
「そんな独善的な理屈は世間では認めていない。
私は納得できませんね。」
「ははは、あなたが納得しなくても、
地球は回っている。目の前に確かに存在するって事ですよ。昔、地動説が異端と言われたように、今では当たり前の考えが、世間に認められないことは歴史上よくある事だ。
同性を愛する事も時代が成熟すれば当たり前になるでしょう。」
説得力のあるオショーの言葉に項垂れて聞いている。
「なんだか、屁理屈に聞こえますね。」
ムッとしてジョーの父は応えた。
「愛し合っているのなら、みんなで見守ってあげましょう。」
無理矢理結論を出した。母親たちは笑っている。父親はムッとした顔を隠さない。
「あなた、大人気ないですよ。」
家を出て二人で暮らす事も認めさせた。オショーが図書館カフェの従業員用の寮として考えよう、と言ってくれた。
「わあ、夢みたい。僕たちカップルだと認められたんだ。」
「サブ、ずっと一緒だよ。」
「あのぅ、犬飼ってもいいですか?
小次郎と荘助。」
ジョーの手料理のランチプレートを親たちに振舞った。
「美味しいわ。ジョー君すごいね。
お料理得意なの?」
ジョーはひきこもっているとき、様々なお袋の味を母に教わった。自分は意外と料理が好きだ、と発見した。
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