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第125話 玉梓

 亮が肩を抱いて耳元で小さな声で聞いた。 「何で、連絡くれないの?待ってたんだよ。 あの番犬がいない時に会いたい。」 「やだ、俺は会いたくなかった。」  玉梓が奥から和服を一式持って来た。 「着付けしましょうか。」  物凄い美女が和服で現れた。年齢不詳。 謎の美人。 「こんにちは、着物が凄くお似合いですね。」  亮が緊張している。 「ええ、いつも和服ですから。」  あたりまえだが、もう何百年も和服で過ごしている。コスプレの和裁担当だ。 「初めまして。あのぅ、あなたもコスプレするんですか?」 サイコが 「亮、何緊張してんだよ。こちら玉梓さん。 メイ先生のお母さんだよ。」 「えっ?お母さん? あまりにも綺麗で,若くて、びっくりした。」 「あら、ありがとうございます。」  奥の畳敷の部屋で着付けをするという。 「今着ているものを脱いでくださいな。」  亮らしくもない、ドキドキしてしまう。 優雅な手つきで着物を着せられた。 (こんな美しい女(ひと)、信じられない。 人間じゃない。妖精? 初めて見るような女(ひと)だ。)  その手で触れられるだけで、おかしくなりそうだ。背の高い亮に着物を着せ掛けるとき覗く襟足の美しさ。白魚のような、と形容されるその指先で触れられると緊張の極致だった。 「そんなに固くならないで。 リラックスしないと綺麗に着付けられないわ。」  亮は、こんなに女性に対して上がってしまうのは初めてだ。  角帯を結んでポンポンとされて、 「さあ、出来ましたよ。琥珀ちゃんも着るのかしら。」 「あの、玉梓さんと写真撮ってもいいですか?」 「え?こんなお婆ちゃんでいいの?」 「とんでもない。お婆ちゃんなんかじゃない。 メイのお母さんにも見えない。美しいです。」  二人並んで姿見の前に立ってみた。 「ほら、俺たち似合いの年頃に見えるよ。」 「ふふふ、嬉しいわ。」  二人の様子を見て琥珀が驚いている。玉梓の妖艶な色気が溢れていたから。

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