125 / 256
第125話 玉梓
亮が肩を抱いて耳元で小さな声で聞いた。
「何で、連絡くれないの?待ってたんだよ。
あの番犬がいない時に会いたい。」
「やだ、俺は会いたくなかった。」
玉梓が奥から和服を一式持って来た。
「着付けしましょうか。」
物凄い美女が和服で現れた。年齢不詳。
謎の美人。
「こんにちは、着物が凄くお似合いですね。」
亮が緊張している。
「ええ、いつも和服ですから。」
あたりまえだが、もう何百年も和服で過ごしている。コスプレの和裁担当だ。
「初めまして。あのぅ、あなたもコスプレするんですか?」
サイコが
「亮、何緊張してんだよ。こちら玉梓さん。
メイ先生のお母さんだよ。」
「えっ?お母さん?
あまりにも綺麗で,若くて、びっくりした。」
「あら、ありがとうございます。」
奥の畳敷の部屋で着付けをするという。
「今着ているものを脱いでくださいな。」
亮らしくもない、ドキドキしてしまう。
優雅な手つきで着物を着せられた。
(こんな美しい女(ひと)、信じられない。
人間じゃない。妖精?
初めて見るような女(ひと)だ。)
その手で触れられるだけで、おかしくなりそうだ。背の高い亮に着物を着せ掛けるとき覗く襟足の美しさ。白魚のような、と形容されるその指先で触れられると緊張の極致だった。
「そんなに固くならないで。
リラックスしないと綺麗に着付けられないわ。」
亮は、こんなに女性に対して上がってしまうのは初めてだ。
角帯を結んでポンポンとされて、
「さあ、出来ましたよ。琥珀ちゃんも着るのかしら。」
「あの、玉梓さんと写真撮ってもいいですか?」
「え?こんなお婆ちゃんでいいの?」
「とんでもない。お婆ちゃんなんかじゃない。
メイのお母さんにも見えない。美しいです。」
二人並んで姿見の前に立ってみた。
「ほら、俺たち似合いの年頃に見えるよ。」
「ふふふ、嬉しいわ。」
二人の様子を見て琥珀が驚いている。玉梓の妖艶な色気が溢れていたから。
ともだちにシェアしよう!

