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第127話 八犬伝
南総里見八犬伝は南房総、館山界隈が出てくるが本当は九十九里が始まりだったかもしれない。馬琴が面白く脚色したが、玉梓を守るために少し場所を変えたらしい。
神社の秘密も、馬琴は気を使って差し支えのない部分だけを物語にした。
それでも南総里見八犬伝は一大スペクタクルだった。ベストセラー。長い長い物語だが、きっかけは九十九里での事だった。
玉梓はその美貌ゆえに数々の男に言い寄られ、その奔放な性格が男を虜にして来た。
かなり開放的な女だった。
現代、その不思議を引き継いで思念となった八房が犬たちを繋いだ。
表立った戦さもない、勢力争いもない、権謀術数飛び交う戦いもないように見えるが、果たして戦国時代より現代は,平和で幸せなのか。
犬たちは何か特別なアンテナがあるようだ。
偶然犬を飼っている者たちが、ラップバトルに集まって来ただけなのか。
八房の存在は謎だ。実体がない。500年間時空を漂っているという。
八犬士と言って結束を強めている犬たちの友情。それを繋いでいるのは実体のない八房。
五月雨が帰って来た。白浜ベースの駐車場に、スカGを停めた。
琥珀が着物を着せられて写真を撮っている。撮影はサイコがやっているが、並んで写されているのは琥珀とあの、亮だ。
そばで着付けを直しているのは玉梓だった。
「撮影してるの? 母さんまで。」
「もう撮影は終わったよね。着物脱いでいい?」
琥珀は一刻も早く着替えたかった。
亮とお揃いで写真を撮っているのが後ろめたい。何もないのに。
着替えて身軽になった琥珀が五月雨のそばに飛んできた。
「メイ、用事は済んだの?」
「ああ、今度は琥珀も連れて行くよ。」
五月雨の親友、ロジャー五十嵐は高名な物理学教授だった。
琥珀は聞きたい事が山ほどある。犬たちの事、玉梓の事。
でも出過ぎた事か、と遠慮している。
シノとケノがあの亮に懐いている。
五月雨には唸るのに。
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