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第131話 ラッパーたち
「オショー、おじさんくさいよ。」
「フーテンの寅、で育った世代なんだ。」
「そうそう、健さんとか、ね。高倉健。
全共闘のアイドルだった。」
犬遠藤さんが言った。亮は何故か年配に受けている。
ラップは続く。
「俺たちよそ者
殴り込んだ白浜ベース
バックはいねぇ
言葉一つで戦った
八つ裂きにされても
タダじゃ死なねぇ。
生身一つで勝負する。
この町は
こんな最高のロケーション
こんな太陽のエモーション
この町の鼓動は希望
俺は湿気ったタバコに火をつける
決定的にかすりもしねぇ
これが俺たちのリアル」
「何だよ、負け犬の遠吠えか?」
「D ope!おまえたちはかっこいいよ。」
「これが俺たちのS wag!」
亮は、俺たちと仲良くしたいんだろう。
「亮がそう言うんなら、アタシもかき回すのは止める。」
ミカドがそう言った。一緒に来たヒロシや仲間たちはまだまだラップがやりたそうだ。
「今度はラップバトルやろうぜ。ちゃんと準備して。」
「平和なサイファーな。」
「つまんねえな、予定調和は。」
「へいわなさいふぁー、
やったぁ、韻、踏んでんな。」
「ラップは殴り合う代わりに選ばれたバトルだ。
平和が一番。」
「亮はその生ぬるい平和主義でよくキングクラッシャーなんて名乗れたな。」
「下◯沢の不良は、まだ、タイマンの良識があんだよ。大勢に来られたら、さすがの俺も死んだな。」
「ぬるいな下◯沢。
A int nothing but a thing.
大した事ない、気にすんな、か?」
「そうそう、ここはおもしれぇ町だ。」
粟生が歌い始めた。誰もが認める粟生の歌。
琥珀は五月雨の隣に座って聞いていた。
その横顔をミカドが見ている。
「可愛い子。メイに愛されて幸せね。
アタシみたいに、すれっからしじゃない。
アタシもあの頃に戻りたいな。」
亮がミカドの肩を抱いた。
「昔、亮と付き合ってたんだ。
亮をゲイにしたのは僕。」
「何で別れちゃったの?」
「僕の浮気。そんなに男が好きなら、プロの男娼になれ!って言われて荒れたの。」
「こいつ、可愛い奴なんだよ。」
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