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第132話 ミカド
「男娼って、そんなに簡単にできるな事じゃないだろ。」
前に買った事がある五月雨が言う。
粟生が犬遠藤さんのギターに合わせて静かなバラードをゆっくり歌っている。聞かせる歌だ。
「こいつは可愛い顔してるから、たちまち人気になって調子に乗ったんだよ。」
亮の言い方にサイコが怒りをあらわにした。
「ミカドの気持ちがわかんないの?
亮、あんたって最低だね。」
亮は怪訝な顔をしている。わからないらしい。
「そもそも何で浮気させたのよ。
あんたが無神経なんだよ。」
「俺が悪いのか?」
「多分、亮には一生わかんないね。」
「亮はミカドに惚れてたんだろ。」
確かにミカドと別れてから亮は特定の恋人を作っていない。元々バイでは,あるのだ。
粟生が泣かせるラブソングを歌っている。
聞いているみんなが切なくなって来た。
「そこに並んで座ってると、すごくお似合いなんだけど。」
サイコがきっぱりと言った。
亮の肩にもたれてミカドは泣いた。
「もう,手遅れなんだ。
たくさんの男に抱かれたから。
今さら好きだなんて言ったら、笑うに決まってる。」
思わず見つめ合う二人。
いつもキャンキャン騒いでいるだけの奴だと思っていたミカド。
愛なんかが介在するとは思わなかった。
亮は、人の心がわからない自分の未熟さを恥じた。
「俺、頭が追いつかない。少し考えさせてくれ。」
地元でもすごくモテる亮だった。
「みんな、彼女とか欲しがってくっつくのが不思議だった。俺はセックスしたらもう相手に興味を失うんだよ。どうでも良くなってしまう。
そう言えば、ミカドはいつも俺のそばにくっついてんな。わざとらしく男と消えていく。
いつもモヤっとしてたな。」
「ヤキモチは、ないんだよね。」
「鈍いなぁ、亮って。」
「自分の頭もクラッシュしてんだよ。」
亮は立ち上がって
「俺、帰るわ。」
下◯沢チームがガタガタと立ち上がった。
「なんだ、みんな帰っちゃうの?」
粟生が残念そうだ。
亮が戻ってミカドの腕を乱暴に掴んだ。
「帰るぞ。じゃあな。」
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