134 / 256
第134話 亮とミカド
九十九里、白浜ベースから帰って来た亮とミカド。
今まで当たり前にミカドを抱いていたのに、今はぎこちない。
亮は一人の人間に執着した事がない。
「俺のラップにもかかわるなぁ。
価値観が変わっちまった。」
「ごめん、僕が変な事言ったから?」
くちづけで言葉を塞がれた。
丁寧でしつこい。中々終わらないキス。
大きな手で髪を分けて顔を見る。
「そんなに見つめないで。」
亮がフッと笑った。
「おまえの顔、久しぶりに見た。美人だな。」
もう一度唇を塞がれた。
ここは一人暮らしの亮のアパートの部屋。いつもは誰かしら周りにたむろしている。今日は気を利かせてみんなどこかに散っている。
狭いベッドに腰掛けて、帰って来てからずっと、キスしている。
長い亮の髪がくすぐったい。手を伸ばして髪をまとめる。やっと唇を離した。
「ふうっ。亮ったら、激しい。思い出す。
初めて抱かれた時の事。」
金髪に染めたミカドの髪を指で梳きながら
「こんな顔してたっけ?」
「ばか、亮のばか。あんたは誰でもいいのね。」
誰かに夢中になった亮の話は聞いた事がない。
「おまえの顔、初めて見るような気がする。
見える世界の色が変わったな。」
亮は、それが恋に落ちた、ということだと気付かない。
「なに、それ。あーあ、お風呂に入りたい。」
「ここの風呂は狭いよ。
いつもそういう順番なのか?」
バシッ。ミカドに打たれた。
「ひどいよ。
もう商売は辞めたって言ったでしょ。」
「悪かった。俺、無神経だな。ごめん。」
やさしく、また、くちづけしてくれる。
(どうせ、僕は公衆便所だ。
優しくされる資格はない。)
悲しい思いになってしまう。
亮はどうやって愛したらいいのかわからない。
本当に大切だ、と思い始めたから。
髪を愛撫した。
「綺麗な髪だ。サラサラで。絹糸みたいだ。」
髪を持ち上げて首にキスマークを付けた。
「俺だけのものにしたい。」
初めて本気になった。
ともだちにシェアしよう!

