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第136話 サブとジョー
二人が暮らす家がある。海岸から内陸に少し入った所の空き家をオショーが買い取ってリフォームしてくれた。社宅という位置づけだ。
荘助と小次郎も一緒だ。二匹が加わって大討論会になる事もある。討論が終わらない時は、犬塚神社に行く。他の犬たちも来ている事があるから、活発なブレーンストーミングになる。
犬の話は面白い。
サブとジョーの犬たちは、南向きの縁側のある和室を使っている。庭に自由に出られる。
彼らのお気に入りのベッドもある。
奥の部屋は、サブとジョーのプライバシーを守れるベッドルームだ。人間用の大きめのベッドが置いてある。大きいベッドを入れる時、二人は恥ずかしがって抵抗した。
今はもう慣れたが、ベッドというものは非常にセンシティブな情報を発信している。
普通の男女なら当たり前の事が、いちいち気にかかる。
それでも、犬たちを交えた同居生活は、概ね順調に進んでいる。
この頃、またサブの「時間がない」という強迫観念が顔を出し始めた。
ジョーが優しく抱き寄せて
「大丈夫だよ。精神は不滅、なんだろう?」
「でもジョーとは離れてしまうんだ。
一緒に死ぬわけじやないし、死んだ先も選べない。人は生まれる時も、死ぬ時も、ひとりぼっちなんだよ。こんな怖いことはないよ。」
人間嫌いで一人がいい、と言っていたのは強がりだったのか。
孤独を好むくせに孤独を恐れる。人間は矛盾した生き物だ。
「動物はあまり、未来の事を考えない」
と研究者は言う。
「だから先のことを思い悩まない。
過去の事にも縛られたりしないらしい。
海馬の構造が違う、とか、前頭前野が未発達だ、とか、専門知識はないけれど、それは気楽でいいな、と思うんだ。」
「サブは面白いな。
時間の経過が関係してくるんだね。
悩みも,苦しみも。」
「そうそう、ジョーは僕の言いたい事をすぐにわかってくれる。ジョーに救われてる。」
ジョーがサブに可愛いキスをする。
「セックスはどう?何か真理が見えるかい?」
サブは顔を赤らめて
「うん、新たな感覚だ。
なぜ、こんな快楽を身体に植え付けたんだろう。
信じてないけど、神様のご褒美かな?
二人じゃないとできない事、だし。」
「それを、愛,って言うんだよ。」
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