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第142話 スサ 2
「怠けてるんじゃないか。」
大人たちの反応はみんな同じだ。
「気にしすぎだよ。お前と仲良くなりたい子だっているはずだ。」
オレの気持ちをうまく説明出来ない。親も理解しようとは、しない。
適応指導教室とか心療内科とか色々連れて行かれて『発達障害』という事になった。アスペルガー症候群というらしい。
知能テストみたいなのをやって『精神遅滞のない発達障害』とかなんとか。
病名が付くと親や周りの人は腫れ物に触るように扱った。レッテルを貼りたがる。レッテルに安心しようとする。
(たまたま、誰よりも感受性が強いだけなんだ。頭は悪くないんだ。)
と、心の中で叫んでも誰にも伝わらない。
スサは猛烈に勉強した。
(おまえ等なんかより頭はいいんだ。
オレの気持ちなんか馬鹿にはわからないさ。)
自分の興味ある事だけ勉強したのでは、浅い知識と馬鹿にされる。大学受験に的を絞って勉強する事にした。独学で、通信教育を受けて単位を一つ一つ履修していった。スクーリングが苦手だった。高卒認定試験になんとか合格した。次は大学だ。粘着質な性格は独学に向いていた。
誰もが一目を置く大学に入る事が全て、だった。
(ずっと引きこもる生活が続けられる訳ではないのはわかっている。兄弟も独立して家を出ている。親は年をとっていつかは働けなくなって死んで行く。その時が来たら自分も死のう。いや、その前に早く死にたい。一人で生きていくなんて考えられない。ただ、今死んでないっていうだけ。
親の顔は見たくない。親の生きる気配のようなものも気持ち悪い。
親はオレを差し置いて楽しい事や生き甲斐のある事をしてはいけないのだ。
オレを生み出した事が罪なのだから、親は一生償って生きろ。楽しい人生など、おまえたちには与えない。親は憎悪の対象でしかない。
「良心のない人っているよね。」
サイコが突然言い出した。みんなに聞きたいらしい。
今日も白浜ベースにみんな集まって来た。ロックバーと無頼庵、の前に広場がある。ベンチがいくつか置いてあって誰でも入って来れる憩いのスペースだ。
少し離れた所にキッチンカーの場所があっていつも二、三台停まっている。食べ物が買える。
「小次郎を蹴ったのは誰だ?」
小次郎はなんとか助かったが重症だった。
他の犬たちも恐れている。正体のわからない悪意。
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