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第143話 サイコパス
「邪悪な心は見えないの。反省もしないし困ったりもしない。頭がいいのよ。
普通の市民になって生きてる。
でも、サイコパス。」
サイコが突然問題提起した。
「サイコパスって精神病の事じゃないのか?」
鉄平が聞く。
「精神病って訳すけど、サイコパスは最近では、良心を持たない人っていうカテゴリーなんだって。」
サイコが本で読んだ事を話してくれる。
「人口の約4%に現実に存在するんだって。
アメリカの精神医学会が作成した良心を持たない状態が、25人に1人だって。」
サイコパスは、アメリカあたりで凶悪犯罪を起こす危険な存在だと思われているが、それはごく少数。大抵は、普通の暮らしをしている中に溶け込んでいる。そして、意味もなく意地悪い事をしてきたり、足を引っ張ったり。
「じゃあ、小次郎を蹴ったのもサイコパスな奴だな。誰だろう?みんな気をつけないと。」
ネットの書き込みに影響を受けて暗い気持ちになっているサブの事を、心配なジョーだった。
カフェの合間にこの広場に顔を出した。
「サブが言ってたネットの書き込み、荒ぶる魂,っていう人の。読んだよ。サイコパスだな。」「なんでも、かんでも、サイコパスって言うの、やめなよ。」
「なんか流行っちゃってるね。
言葉が独り歩きしてる。」
ジョーからの一斉メールで、ほぼ全員が書き込みを読んでいるようだ。
「コジを蹴った奴なら、鉄平が顔見てるから会えばわかるよ。」
犬たちも集まってその話題で持ちきりだ。
鉄平と一緒にスサに会ってみよう、と言う話になった。
待ち合わせの誘いにスサは乗って来た。
初めて会うスサは、何か構えているように肩に力がはいっていた。
「こんにちは。君たちは学生?大学どこ?
オレのブログ見てくれてるんだよね。」
「キミがスサか。オレはジョー。こっちはサブだよ。初めまして。俺たちは学生じゃないよ。
近くの図書館カフェで働いている。」
「僕も学生じゃない。18才で引っ越して来たから地元の学校の事も知らないし。学校繋がりじゃないんだ。」
「なんだよ、大学も出てないのか。
オレと話、合うかな。オレのブログ、難しい言葉が多いだろ。意味わかるか?」
ずいぶん失礼な奴だ。少し遅れて鉄平が来た。
「ラップやってんだってね。ラップってヤンキーみたいなやつが多いな。頭悪そう。」
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