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第145話 荒ぶる魂

 1人の部屋でスサは思う。今日の話はいつにも増して徒労感を残した。  イヤな気持ちになる事には慣れている。 しかし、孤独を突きつけてくるような、あの白浜ベースの奴らから受けたダメージは、慣れてない感覚だった。いつになく、引きずっている。 (ちぇっ、仲良しごっこ、か。 人として弱いだろ。オレは一人でもやっていける。一人が潔い、と思ってきた。  あんな奴らは嫌いだ。) こだわっている自分に気付いた。今までは気持ちに蓋をして来た。誰かに好意を持つと傷つく事はわかっていたから。 (あいつら、サブとジョーって言ったっけ。 ジョーって奴、サブの手を握っていた。 サブはどんなに安心だっただろう。 オレはいつもひとりぼっちだ。いつも、そう。)  スサは人と正直に向き合っているつもり。なのに他人と話すとケンカになってしまう。本音で話しているのに。  サブとジョーも家に帰って来た。 「ねえ、犬に酷い事するのって許せないんだけど。」 サブは思い出してもつらくなる。 小次郎が蹴られた事。 それを目の前で見た鉄平が怒るのはわかる。 「でも、なんだかスサが哀れでならない。 哀れんだら気を悪くするかもしれない。  僕たち仲間がいたから落ち着いてたけど、 スサは一人だった。」  ジョーに優しく抱き寄せられた。 「サブはやさしいね。 そんな所も大好きだよ。」 「恋をした事、ないんだろうな。」 「あのスサっていう奴?」 「うん、好きな人が出来たら変わるんだろうな。」  出会いがなさそうな奴だった。 「もっと、白浜ベースに通ってくれば、きっといい出会いがあると思うんだ。」 「彼は本をたくさん読んでいそうだから、 図書館カフェに来るといいね。」 「サブを取られないようにしないと、な。」 「冗談!スサって努力家みたいだから、きっとなにか見つかるよ。」 「ずいぶん親切なんだな。」

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