145 / 256
第145話 荒ぶる魂
1人の部屋でスサは思う。今日の話はいつにも増して徒労感を残した。
イヤな気持ちになる事には慣れている。
しかし、孤独を突きつけてくるような、あの白浜ベースの奴らから受けたダメージは、慣れてない感覚だった。いつになく、引きずっている。
(ちぇっ、仲良しごっこ、か。
人として弱いだろ。オレは一人でもやっていける。一人が潔い、と思ってきた。
あんな奴らは嫌いだ。)
こだわっている自分に気付いた。今までは気持ちに蓋をして来た。誰かに好意を持つと傷つく事はわかっていたから。
(あいつら、サブとジョーって言ったっけ。
ジョーって奴、サブの手を握っていた。
サブはどんなに安心だっただろう。
オレはいつもひとりぼっちだ。いつも、そう。)
スサは人と正直に向き合っているつもり。なのに他人と話すとケンカになってしまう。本音で話しているのに。
サブとジョーも家に帰って来た。
「ねえ、犬に酷い事するのって許せないんだけど。」
サブは思い出してもつらくなる。
小次郎が蹴られた事。
それを目の前で見た鉄平が怒るのはわかる。
「でも、なんだかスサが哀れでならない。
哀れんだら気を悪くするかもしれない。
僕たち仲間がいたから落ち着いてたけど、
スサは一人だった。」
ジョーに優しく抱き寄せられた。
「サブはやさしいね。
そんな所も大好きだよ。」
「恋をした事、ないんだろうな。」
「あのスサっていう奴?」
「うん、好きな人が出来たら変わるんだろうな。」
出会いがなさそうな奴だった。
「もっと、白浜ベースに通ってくれば、きっといい出会いがあると思うんだ。」
「彼は本をたくさん読んでいそうだから、
図書館カフェに来るといいね。」
「サブを取られないようにしないと、な。」
「冗談!スサって努力家みたいだから、きっとなにか見つかるよ。」
「ずいぶん親切なんだな。」
ともだちにシェアしよう!

