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第147話 ロックバー
スサは働いていないから自由に使える金をあまり持っていない。出歩く時は古い軽自動車に乗っている。親が乗らないものを借りている。18才になると同時に車の免許を取った。田舎では、これは生活必需品だ。
親と同居している。親を嫌っても学費など必要なものは親を頼っている。 親に逆らうのはガキのすることだ、と頭ではわかっているが素直になれない。
長いひきこもり生活だ。白浜ベースが出来てやっと外出することが出来るようになった。
今までこの田舎にはどこも行き場が無かった。
亮が察して
「大丈夫だよ。俺の奢りだ。酒飲めるんだろ。」
「オレ、車なんだ。」
「家、遠いの?」
「うん、市内だけど10kmくらいあるよ。
ここは不便な所なんだ。」
亮に聞かれて少し恥ずかしかった。亮は下○沢から来たと紹介された。都会だ。
「あんた、スサっていうのか?本名は?
ま、それはいいか?なんて呼ばれたい?」
スサは言葉に詰まってしまった。店にいたみんなが注目している。
そこに五月雨と琥珀が入って来た。
「あ、片岡聡(かたおかさとし)じゃん。
陰キャのおまえがこんな所にいるの、珍しいな。」
琥珀とスサこと片岡聡はお互いに驚いている。
片岡聡と言われた人は、琥珀の知り合いだった。
ロックバーで秒で本名が晒された。
「高校の同級生だったんだよ。
短い付き合いだったけど。」
サトシはほとんど高校に行っていない。
琥珀とは、たまたま数回話をした事があった。メールの交換をしてラインで繋がった。
「オレは高校3日しか行ってない。
後は通信で単位を取って高認試験で大学に入った。覚えていたんだな。」
「うん、たまにラインしたじゃん。
今は大学生?頑張ってるね。
俺は高校、一学期しか行ってないよ。
夏には辞めちゃった。」
何度か話したのは主にアニメの事だった。推しアニメの話で盛り上がった。それでライン交換したのだ。
「今一緒に来たのは俺の恋人。メイ先生だよ。
この店でドラムを叩いているんだ。」
恋人?すごく綺麗な外国人のような人が会釈した。いくら綺麗でも,男の人、だ?
背が高くてがっしりしている。
「世の中狭いねぇ。ここで会えるなんて。
相変わらずアニメファンなの?」
「ああ、この頃はブログにいろいろ書いてるよ。
それでサブとジョーと知り合ったんだ。」
この頃、この噂で持ちきりだった、「宇宙と生命についての鋭い考察」の発信者が聡だった。
荒ぶる魂。
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