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第150話 痛車

 聡は兄の住んでいる片岡モータースの2階に行った。 「兄貴、頼みがあるんだ。」 「何だよ、珍しいな。」 「オレに出来そうな事ないかな。 働きたいんだよ。金を稼ぎたい。」 「やっと人間らしい事、言うようになったな。 整備士になりたいのか?」 「そんなの無理だろ。難しいんだろ。」 「そうだ。おまえにぴったりの仕事があるよ。 痛車(いたしゃ)に興味あるって言ってたよな。絵を描くのも好きだったよな。」 「ああ、アニメ好きだから、前から痛車には憧れてたよ。」 「俺の仲間に痛車を請け負ってる奴がいるから、 そこで修行させて貰えば。  おまえに耐えられるかなぁ。」 「紹介してくれ。雇ってもらえるかな。 自分で使える金が欲しいんだ。」 「甘いな。修行で給料なんか貰えるわけないだろ。」  聡は、痛車に興味津々だ。車にアニメの絵を貼る。個人でやってる者もいるから、自分にも出来そうだ、と思った。エイトドッグスのアニメを車全体に貼り付ける。考えただけで楽しくなる。  目立つ事は苦手だが、なんか白浜ベースの宣伝になりそうだ。 「おまえ、考える事がデカいな。 仲間が出来たのか?ひきこもりがよ。」 「兄貴、いつまでも昔のオレじゃねぇよ。 紹介してくれ。頑張るから。」  翌日、白浜ベースに行ってあの『無頼庵』を覗いてみた。 「聡、早速来たのか?」  琥珀が可愛いカッコで出迎えてくれた。 「おまえ、可愛いな。今日は頼みがあるんだ。 アニメになったエイトドッグスを描いてるオータって人を紹介してくれ。」  琥珀はいつになく積極的な聡に、協力してやりたいと思った。 「オータに連絡してみるよ。アニメで何やるの?」 「痛車、作るの。手始めにオレの車、ミラちゃんに貼ってみる。」 「わぁ、痛車、カッコいいな。 聡そんな技術あんの?」 「オレの兄貴が自動車整備の仕事してて、仲間がいるんだよ。オレ、そこに弟子入りすんの。」 「いいね。八犬士のキャラが描いてある車なんて 嬉しいな。早く見たい。」 「まだまだ、これから弟子入りして教えてもらうんだから。気が早いな。」  取り敢えず、オータに見本を描いてもらうことになった。下絵を描いて、ステッカーを作る。 「なんか聡が眩しいゾ!」 「恥ずいからやめろ。まだ公開するなよ。」

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