151 / 256
第151話 オータ
漫画家の鈴木翁太に会う。琥珀のいる『無頼庵』で会う事にした。
「こんちは、何枚か原画を持って来たよ。」
思わぬヒットを飛ばしている漫画「エイトドッグス」。オータ自身が信じられないと思っている。
お話は多分にファンタジーの要素の多いものだった。八犬伝をモチーフに、でも登場人物は馬琴の話とは大幅に違っている。舞台は現代だ。犬たちが出て来る。
オータは実際の犬たちを見ておもしろがっている。主役は和彫り野郎石田三成だ。
本人は何だか調子に乗っている。今日もオータが声をかけたら飛んできた。
今はもうヤクザに足を突っ込んでチンピラ然としている。
「痛車,作るんだって?どんな絵を貼るんだ?」
石田は自分の車も痛車にしたい、と思っている。
M会のパシリになっていいように利用されている。学習しない奴だ。
M会で使っていない車を石田は使わせてもらっている。古いポンコツのクラウンだ。あいかわらす、学習しない奴だ。
(あの車、痛車にしたらマズイかな?)
イラスト原稿をテーブルの上に広げた。
「可愛い。犬たちもいいけど、女の子も入れたいなぁ。あと,玉梓も。」
「兄貴の知り合いに大体の事は聞いたんだ。
フルラッピングがカッコいいけど、費用もかかるらしい。」
兄貴の知り合いは痛車のプロだった。茂○の国道沿いで自動車工場をやっている。痛車のための設備もそれなりにあるという。
「やっぱり、金だなぁ。」
「おい,ヤクザ、金融のプロだろ。
上納金とか納めてんのか?」
「何だ,コラァ。
口の聞き方に気をつけろよ。」
「態度、悪いからもうみっちゃんに声かけねぇよ。」
石田三成はシュンとして黙った。琥珀には頭が上がらないらしい。琥珀の後ろの五月雨が怖いのだ。五月雨には一目置いている。銃を扱えるからだ。以前銃を撃つ場面でモタモタして五月雨に助けられた事がある。
(ビビってチャカ一つ撃てなかった。
俺ダサいな。みんなに黙っていてくれる琥珀とメイ先生に感謝だな。)
「痛車が海岸に集合したら壮観だろうな。」
「実現させよう。」
ともだちにシェアしよう!

