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第153話 クラッシャー
下○沢の亮たちが痛車を見に来た。
「おお、カッコいい。俺たちもやりたい!」
いつも車数台で来てるから。」
「俺たちの車も痛車にしようぜ。」
と言い出した。
「片岡モータースでやってくれ。」
「いくらくらいかかるの?」
「60万くらいかな。」
「ああ、じゃあやろうぜ。」
余裕のある口ぶりに
「亮たちって仕事何してんの?」
不思議そうにタイジが聞いた。
「クラッシャー、解体屋だよ。荒っぽい仕事だ。」
「本当にクラッシャーだったんだ。
男っぽい仕事だ。それでみんなガタイがいいんだ。」
「ミカドは別だけどね。」
華奢なミカドの肩を抱いて言った。
「相変わらず仲いいね。」
「琥珀とメイ先生も、な。」
車を回して来た。聡がハンドルを握っている。ロックバーと『無頼庵』の前にも駐車スペースがある。
聡が車を回してきたら粟生か飛びついて来た。
「カッコいい。これあんたの車?
いいなぁ、ちょっと乗せてよ。」
するりと助手席に滑り込んできた。
「どこかにドライブしよう。」
聡は慣れない、女の子に緊張した。
「どこに行く?」
「どこでもいいよ。あんたの家は?近いの?」
勝手について来た。
信号待ちで止まるたびに注目の的だった。
「ねえ、みんなが見てるよ。気分いいな。」
仕方がないので兄貴の家までドライブだ。兄貴の部屋のある片岡モータースの2階を目指す。
兄貴は仕事中だった。汚れたツナギで車の下から顔を出した。
「やあ、彼女か?ここは汚れるから2階に行け。
茶でも出してあげな。あ、コーラとかがいいか?」
「こんにちは。アタシ、聡の彼女でーす。
お兄さんもイケ、だね。」
「勝手な事言うなよ。
のど乾いたか?コーラ飲むか。」
二人で2階に上がった。兄貴の部屋は割と片付いていた。真ん中にベッドがあるのが気まずい。
「上がれよ。兄貴の部屋だ。」
座るところがないのでベッドに腰掛けた。
小さな冷蔵庫からコーラを出して手渡すと、粟生はその手を引っ張って抱きついて来た。
いきなりくちづけされた。聡は初めて女の子とキスした。初キスはこの前の亮だったが、女の子は初めてだった。思ったより感動がない。亮の強烈な印象とは違った。女の子の匂いが嫌だと思った。
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