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第156話 エイトドッグス
今夜は地元優先の日なのか。近所の奴らが集まって来た。ここは交通が不便な所だ。
みんな車に乗り合わせてやって来る。族車っぽいのもいる。ハンドルキーパーは酒を出してもらえない。咲耶さんが厳しいのだ。20才未満もダメだ。
「外に痛車が停まってんぜ。スゲェカッコいい。
前からいたっけ?」
聡はちょっと気分がいい。
自慢げに鉄平が聡を紹介してくれる。
「聡だよ。みんな知ってるか?
この聡が痛車のプロなんだぜ。」
ぞろぞろと店に入って来た輩の中に聡を知ってる者がいた。
「あ、あんた、俺とタメだよね。
アマッタクンだ!あーこいつアマッタクンだよ。
ダセェ、小学校の時、先公が付けたんだよ、アマッタクンてあだ名。」
聡は顔色が変わった。ナナオが
「おい、おまえ、この店にちょくちょく来てるよな。俺の事はどうだ?知ってるか?」
首を掴まれて息が苦しそうだ。真っ赤になっている。一緒に来たツレが
「ナナオさん勘弁してください。
死んじゃうよ。ナナオさんの元力士の力じゃ。」
手を離した。ドアの外まですっ飛んだ。
「余ったとか抜かしてんじゃねぇ。
聡は俺たちの仲間だよ。痛車の聡。覚えておけよ。エイトドッグス舐めんな。」
「す,すいませんでした。」
「頭が高い。土下座もんだろ。」
「ナナオ、もういいよ。泣いてるよ。」
半泣きになった聡の元同級生はペコペコ謝っている。
「やめなよ、怖い店だと思われるよ。」
「こいつら隣町の暴走族だよ。
族の溜まり場になっても困るよね。」
「暴走族?絶滅危惧種じゃね?」
「俺たち族じゃないです。ただの走り屋。
最近白浜ベースが面白くなったって言うんで、来てみたんです。」
「昔はすごかったよね。土曜日の夜なんか、うるさくって眠れなかった。車の音で。」
「ビーチロードは一宮から一直線でみんなすごいスピード出してた。
しょっちゅう鼠取りやってたよ。警察儲けさせてよ。あの頃の奴らはもういい年だろ。」
和彫り野郎石田みっちゃんの兄貴の世代だ。
「おまえら、名前は?聡と同級生なんだろ。」
聡を覚えていたのは内田と言った。
「一緒に来たのは永島と菊池と富永です。
高校の同級生です。」
「高校はどこだ?」
「金田工業。」
「ああ、あの不良製造所、ね。」
こんな名前の売れ方は、イヤダ。
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