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第157話 伝説
みんな車好きで、この頃、話題の白浜ベースに来て見たそうだ。
「犬塚神社のラップバトルも有名で、F市のクラブでもこの町のラッパーが出てますよね。」
みんな一斉にサトウを見た。鉄平が自慢そうだ。
「おまえたちもなんかやれよ。ラップとか。」
店に貢献するために何か飲み物を注文した。
「サトウ先輩は有名ですよ。それとジョー先輩。
ナナオさんと鉄平さんも,この辺の若い奴はみんな憧れてます。」
「心にもない事、言ってんじゃねえぞ。」
「いや、もう伝説ですよ。でも聡くんもメンバーだったとは知らなかった。」
「俺たちも最近、知ったんだけどよ。」
「え?」
「その、アマッタクンってあだ名、嫌な言い方だろ。おまえらいじめっ子だったのか。」
「いや、あの時の担任がそう呼んだんで、俺たちは別に・・」
「教師のレベルが低いな。」「ここに石田のみっちゃんがいたら、落とし前つけろ、って指詰めもんだな。
良かったな、今夜は来てなくて。」
「あの、石田三成先輩ですか?
まじもんのヤクザにゲソ入れたって評判ですよ。
和彫りの紋紋が凄えって。」
このガキどもから最近のこの辺りの半グレの情報を知る。
白浜ベースを旗揚げしたら、必ずこういう問題が起こると思っていた。
不良の溜まり場になったら、行政が手を引くだろう。街の活性化、と治安問題は切り離せない。
行政はいつだって及び腰だ。
「俺たち、今日ここに来て痛車を見ることが出来て嬉しいんです。
俺たちの車もやりたいなぁ、と思ってます。」
「じゃあ、金貯めな。フルラッピングで60万。」
「おお、頑張ろう!」
みんな中々厳しいバイトをやっているらしい。
聡は同級生が頑張ってるのを見直した。
夜も更けてきた。サトウは帰ろうとしている。
鉄平が一緒に来たようだ。ナナオも帰ると言っている。粟生がくっついている。
「おまえは一人で帰れるだろ。」
「やだ、ナナオ送ってよ。」
「じゃあ、俺送ってくわ。」
ナナオが立ち上がった。鉄平はサトウと帰るという。
「サトウは車の運転しないの?」
「出来ないんだよ。教習所で一言もしゃべらないから免許、取れない。いつもはオレが車出すけど。俺が出せない時、聡に頼もうかな。」
「えっ?
ああ、いいよ。痛車制作でオレ、いない時もあるけど。」
「サトウも痛車に興味あるって。」
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