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第160話 ライブ
琥珀と五月雨が入って来た。『無頼庵』を締めてきたのだ。
「外に停まってるミラ可愛いね。
ケノとシノのアイドルっぽいイラストがいいね。コスプレする人がいそう。」
擬人化した芝犬のシノとトイプードルのケノが
ステッカーになって貼られていた。ミニスカートを翻して動きがある。可愛いキャラだ。
「オータが描いたの?可愛いね。」
「こんなに目立つと運転するの恥ずかしくない?」
「アタシは気分良かったよ。みんなに注目されて。」
粟生が話に入って来た。いつも傍若無人だ。
「下○沢の連中、帰っちゃったね。」
「仕事があるって。結構キツい仕事みたいだからな。」
ナナオもいる。ステージの前に集まって来た。
「今夜は何やる?ブルース?」
サトウを見て
「ヒップホップっぽいのやるか?楽譜あるよ。」
「やだ、メロディーの綺麗なロックがいい。
イン・マイ・ライフやりたい。」
ドラムセットの後ろに座っていた五月雨が、
「いいねぇ。僕も思い入れのある曲だ。」
粟生がマイクを持って
「今夜はビートルズナイト。
みんな、行くよー!」
奥のカウンター席でオショーと玉梓が咲夜さんと喜んでいる。
「年寄り向けに気遣ってもらったね。」
「懐かしい曲だ。」
シングルモルトをチビチビと舐めるように飲んでいるのが、いい雰囲気だ。
「スサって子のネットの投稿読んだか?
玉梓はどう思った?」
「うーん、私は何でも知ってると思わないで欲しいの。長生きしてると、あまり記憶にないわ。
彼の文章はかなり鋭い所を見てるわね。」
「あそこにいるよ。鉄平とサトウと話してるな。
呼んでみよう。」
呼ぶと、カウンターに聡が来た。
「スサ君、少し話しないか?」
「スサの名前はネットだけで。オレ聡です。」
「ああ、スマンな。
聡君は、世紀末に話題になったアカシックレコードに近い事を書いてるんだよ。
インド哲学のアーカーシャは、アカシックの語源だと、私は勝手に解釈しているんだ。」
「最近の話題は、0ポイントフィールド仮説よね。阿頼耶識(あらやしき)の事だと思っわ。」
聡は急にアカデミックな話題になって焦った。
この頃、仲良しごっこで、頭のネジが緩んでいた。
オショーと玉梓は異質な空気を醸し出している。
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