161 / 256
第161話 ライブ 2
生演奏の迫力で話をする雰囲気ではない。声がかき消される。結局カウンター席で音楽を聴く事になった。
今日は犬遠藤さんも松ちゃんも来ている。フルメンバーだ。全員揃うとかなり贅沢なバンドだ。
「もったいないです。
一緒にセッション出来るなんて。」
「録音してライブ盤を発売出来そう。
ファンなら垂涎のライブ盤。誰か企画して。」
偶然の寄せ集めバンドとしては、かなりグレードが高い。
「マネージャーが必要だな。」
演奏が終わってDJタイジが音楽をかけた。
「痛車のおかげで、宣伝もうまくいってるようだね。」
オショーが聡に言った。
「キミはいろんな才能があるんだな。」
「才能だなんて。恥ずかしいです。
付け焼き刃みたいなもので。」
聡はこの頃出会った様々な技術を持つ人に支えられている、と感じていた。
コツコツと何かを作り出す事が楽しい。
それを続けている職人の存在に敬服する。
高橋自動車の高橋さん。ラッピングの腕前もすごいが、ステッカーを手切りで細かい所まで仕上げるその技。
町のいろいろな所に凄い人がいる。地道な作業を支えている。
「そうだね。コスプレの人たちも凄いんだ。
二次元を三次元に起こす。不可能を可能にする、みたいな作業には頭が下がるよ。」
琥珀が言った。
「痛車とコスプレは通じるものなんだな。」
オショーが感心している。
バンドも人知れず凄いメンバーだ。白浜ベースにいつの間にか集まって来た、職人気質な顔ぶれ。
「オショーがここを解放区にしたいって言ってたけど、少しずつ近づいているのではないか?」
みんなお酒の力を借りたり,借りなかったりしていい気分になったようだ。
聡はずっとタカヨシ(サトウ)から目が離せない。タバコを吸う仕草がカッコいい。
そこにジョー先輩とサブもやって来た。
「ライブ,終わっちゃった?
やっぱり、片付けが終わるとこの時間だ。
残念。」
「図書館カフェは年中無休なんだって?
市役所の管轄でしょ。メンバー増やしてもえば。交代要員は必要だ。」
オショーも問題を感じている。
ともだちにシェアしよう!

