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第161話 ライブ 2

 生演奏の迫力で話をする雰囲気ではない。声がかき消される。結局カウンター席で音楽を聴く事になった。  今日は犬遠藤さんも松ちゃんも来ている。フルメンバーだ。全員揃うとかなり贅沢なバンドだ。 「もったいないです。 一緒にセッション出来るなんて。」 「録音してライブ盤を発売出来そう。 ファンなら垂涎のライブ盤。誰か企画して。」  偶然の寄せ集めバンドとしては、かなりグレードが高い。 「マネージャーが必要だな。」  演奏が終わってDJタイジが音楽をかけた。   「痛車のおかげで、宣伝もうまくいってるようだね。」  オショーが聡に言った。 「キミはいろんな才能があるんだな。」 「才能だなんて。恥ずかしいです。 付け焼き刃みたいなもので。」  聡はこの頃出会った様々な技術を持つ人に支えられている、と感じていた。  コツコツと何かを作り出す事が楽しい。 それを続けている職人の存在に敬服する。  高橋自動車の高橋さん。ラッピングの腕前もすごいが、ステッカーを手切りで細かい所まで仕上げるその技。  町のいろいろな所に凄い人がいる。地道な作業を支えている。 「そうだね。コスプレの人たちも凄いんだ。 二次元を三次元に起こす。不可能を可能にする、みたいな作業には頭が下がるよ。」  琥珀が言った。 「痛車とコスプレは通じるものなんだな。」  オショーが感心している。 バンドも人知れず凄いメンバーだ。白浜ベースにいつの間にか集まって来た、職人気質な顔ぶれ。 「オショーがここを解放区にしたいって言ってたけど、少しずつ近づいているのではないか?」  みんなお酒の力を借りたり,借りなかったりしていい気分になったようだ。  聡はずっとタカヨシ(サトウ)から目が離せない。タバコを吸う仕草がカッコいい。    そこにジョー先輩とサブもやって来た。 「ライブ,終わっちゃった? やっぱり、片付けが終わるとこの時間だ。 残念。」 「図書館カフェは年中無休なんだって? 市役所の管轄でしょ。メンバー増やしてもえば。交代要員は必要だ。」  オショーも問題を感じている。

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