162 / 256
第162話 思わぬ展開
ジョーに甘えているサブが羨ましい。聡は頭の中で妄想する。ジョーに甘えるサブのように聡もタカヨシ(サトウ)に甘えてみたい。タバコを吸っている指先がセクシーだ。
(オレは男が好きなのか。このごろ、おかしい。
いや、ただの欲求不満だよ。)
綺麗だ、と思う。タカヨシの仕草。
まだみんなの前ではしゃべらない。鉄平を通して会話している。
(オレにだけ、話しかけてくれたんだ。)
ふとした瞬間に目が合ってしまう。
酔っ払ってサイコが入って来た。
「バイト先の人とカラオケスナックに誘われて抜け出せなかった。ふうっ、疲れたぁ。」
いきなり座っているタカヨシの肩に抱きついて来た。
「サトウ、相変わらずかっこいいね。
すっごい好きなタイプ。無口な所がたまらない。」
「サイコ飲み過ぎだよ。」
鉄平が嫌な顔をした。
「いいじゃん、サトウ、何とか言えよ!
大好きだよ。」
最高に困った顔をしているタカヨシ(サトウ)を何とか助けようと間に割って入った。
「誰?あんた、見ない顔だね。可愛い顔してる。アタシこっちでもいいかな。」
タカヨシが立ち上がった。抱きつかれている聡の腕を取ってサイコから引き剥がす。
「ひど〜い、みんな冷たい。
アタシ、鉄平でいいや。」
「いい加減にしろよ、男が欲しいのか!」
「違う違う、全然違う。LGBTQAってわかる?
アタシそれのAだから。ア・セクシャル。
男に興味ないの。セックスにも興味ない。
安心して。」
「誰が不安だって言ったよ。
お前が安心させられるのかよ。」
鉄平がものすごく怒っている。サイコが泣き出した。泣きながら鉄平に抱きついている。
背の高いサイコは小兵の鉄平より頭一つ大きい。
それでも鉄平は受け止めてサイコを抱きしめてやっている。
「よしよし、おまえは泣き上戸だったんだな。
俺、サイコを送っていくよ。」
車で来ている鉄平がサイコを連れ出した。
「誰か、サトウを送ってやって。」
酔っ払いのサイコを連れて鉄平が出て行った。鉄平は小兵ながら、男気のある奴だ。頼りになる。
聡とタカヨシは顔を見合わせた。
「いいよ、タカヨシ、送っていくよ。」
ともだちにシェアしよう!

