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第165話 聡とタカヨシ

「荒ぶる魂」はこの頃、影を潜めている。 聡は急に忙しくなった日々に信じられない思いだ。 「自分は、結局お友達が欲しかっただけなのか。 タカヨシと出会って満足してしまったのか。  この世に対する不満や憎悪は、ただの欲求不満だったのか。  オレは情けない奴なんだよ。)  タカヨシも運転免許を取るので忙しそうだった。  聡の仕事、痛車の注文は兄を通して高橋自動車に送る。  ステッカーにするイラストはオータの「エイトドッグス」から起こしている。  『無頼庵』も「エイトドッグス」モチーフのコスプレの注文が増えた。撮影会も盛況だ。  白浜ベースは活気づいている。 「久しぶりだね。図書館カフェにお茶しに行こうぜ。」  タカヨシが聡に会いに来た。 顔が赤くなる。聡は寂しかった事に気づいた。  並んで歩いてカフェに行く。犬も一緒だ。 「いらっしゃい。」  サブが迎えてくれた。 「今日は天気がいいから、三階のテラスが気持ちいいよ。」  二人で階段を上がった。 途中でタカヨシが聡の手を取って、繋いで登った。犬は階段の下まで、だ。 「この前の約束、まだ生きてる? ドライブに行く話。」 「うん、ミラで行くならいつでもいいよ。」 「俺、もうすぐ免許取れそうだ。 でも、いきなりドライブは怖いな。」 「オレが運転するなら、今すぐでも大丈夫。」  お互いに顔を見合わせた。セックスしようという約束なのだ。 「ちょっと待って。」 「何?あの話はもう無くなったのか?」 「違うよ。け、けいかくを立てよう。」  聡は痛車の仲介のような事で少し稼げるようになっていた。  タカヨシはF市のクラブでラッパーとしてメンバーに入れてもらってる。少しだがギャラも出る。フリースタイルバトルで勝ち抜けば賞金も出る。少ないが収入はある。 「じゃあ、今度の日曜日、二人でドライブだ。」 「一泊くらい出来るかな、温泉とか。」 「男同士で泊まれる所、あるかな?」  珈琲を運んで来たサブが 「二人、付き合ってるの?」 と、聞いて来た。思い切って 「そうだよ。」  タカヨシが答えた。 「わあ、嬉しいな。仲間が増えた。」

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